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六〜七

作 芥川龍之介

河童の恋愛は、私たち人間の恋愛とはまったく異なる趣を持っています。雌の河童は、自分が気に入った雄の河童を見つけると、どんな手段を使ってでもその雄を捕まえようとします。特に正直な雌の河童は、まるで狂ったように雄を追いかけるのです。実際、私は一度、気違いのように雄の河童を追いかけている雌の河童を見かけました。その雌だけでなく、彼女の両親や兄弟までもが一緒になって雄を追いかけていたのです。雄の河童は本当に惨めで、逃げ回った挙句、運良く捕まらなかったとしても、数ヶ月は床に伏せてしまうことがあるのです。

ある日、私は自宅でトックの詩集を読んでいました。すると、突然、ラップという学生が駆け込んできました。ラップは私の家に転がり込むと、床に倒れ込み、息を切らしながら言いました。

「大変だ! とうとう僕は抱きつかれてしまった!」

私は慌てて詩集を放り出し、戸口の錠を下ろしました。しかし、鍵穴から覗いてみると、硫黄の粉を顔に塗った背の低い雌の河童がまだ戸口の前をうろついていました。ラップはその日から何週間も私の床で寝泊まりすることになりました。しかも、いつの間にか彼の嘴はすっかり腐って落ちてしまったのです。

もちろん、時には雌の河童を一生懸命に追いかける雄の河童もいますが、実際には雌の河童がそのように仕向けているのです。私もまた、雌の河童を追いかけている雄の河童を見かけました。雌の河童は逃げながらも、時折わざと立ち止まったり、四つん這いになったりして見せるのです。そして、ちょうどいいタイミングで、まるでがっかりしたかのように雄を捕まえてしまうのです。私が見た雄の河童は、雌の河童を抱きしめたまましばらく転がっていましたが、やがて起き上がったときには、失望や後悔の入り混じった、なんとも言えない気の毒な表情を浮かべていました。

しかし、それでもまだ良い方です。私が見かけた小さな雄の河童は、雌の河童を追いかけていました。雌の河童はいつものように誘惑的に逃げていましたが、そこへ向こうの街から大きな雄の河童が鼻息を荒くして歩いてきました。雌の河童は何かの拍子にその雄の河童を見て、「大変です! 助けてください! あの河童は私を殺そうとするのです!」と金切り声を上げて叫びました。もちろん、大きな雄の河童はすぐに小さな河童を捕まえ、通りの真ん中で押さえつけました。小さな河童は水掻きのある手で何度か空を掴もうとしましたが、とうとう息絶えてしまいました。しかし、その時には雌の河童はにやにやしながら、大きな河童の首にしっかりとしがみついていたのです。

私が知っている雄の河童たちは、皆一様に雌の河童に追いかけられています。もちろん、妻子を持つバッグも例外ではありません。何度か捕まったこともあります。しかし、マッグという哲学者だけは、一度も捕まったことがありません。彼は醜い河童の中でも特に目立つ存在で、またあまり外に出ずに家にこもっているからです。私は時々、マッグの家にも話をしに出かけました。彼はいつも薄暗い部屋で、七色の色硝子のランタンを灯し、高い脚の机に向かって厚い本を読みふけっていました。

ある時、私はマッグと河童の恋愛について話し合いました。

「なぜ政府は雌の河童が雄の河童を追いかけるのをもっと厳しく取り締まらないのでしょうか?」

「それは一つには、官吏の中に雌の河童が少ないからです。雌の河童は雄の河童よりも嫉妬心が強いものですから、雌の河童の官吏が増えれば、雄の河童は今よりも追いかけられずに済むでしょう。しかし、その効果も限られています。なぜなら、官吏同士でも雌の河童は雄の河童を追いかけるからです。」

「じゃあ、あなたのように暮らしているのが一番幸せなわけですね。」

するとマッグは椅子を離れ、私の両手を握りしめながら、ため息をついて言いました。

「あなたは私たち河童ではないので、理解できないのも無理はありません。しかし、私も時にはあの恐ろしい雌の河童に追いかけられたい気持ちになることもあるのです。」

私はまた、詩人のトックと共に音楽会に出かけましたが、今でも忘れられないのは三度目に行った音楽会のことです。会場の様子は、日本とあまり変わりませんでした。やはり、段々とせり上がった席に雌雄の河童が三四百匹、プログラムを手にしながら、一心に耳を澄ませていました。私はこの三度目の音楽会では、トックや彼の雌の河童の他に、哲学者のマッグと一緒に一番前の席に座っていました。

すると、チェロの独奏が終わった後、妙に目の細い河童が一匹、無造作に譜本を抱えたまま壇の上に上がってきました。この河童は、プログラムに名前が載っている名高いクラバックという作曲家です。プログラムに書かれている通り、いや、プログラムを見るまでもなく、クラバックはトックが所属している超人倶楽部の会員ですから、私も顔だけは知っていました。

クラバックは、盛大な拍手の中で一礼をし、静かにピアノの前に歩み寄りました。そして、無造作に自作のリードを弾き始めます。トックの言葉によれば、クラバックはこの国が生んだ音楽家の中でも比類のない天才だそうです。僕は彼の音楽に心を奪われ、その抒情詩にも興味を持っていました。大きな弓なりのピアノの音に、熱心に耳を傾けていました。トックやマッグも、もしかしたら僕以上に恍惚としていたかもしれません。しかし、あの美しい雌の河童だけは、プログラムをしっかりと握りしめ、時折いらだたしそうに長い舌を出していました。これは、マッグの話によれば、十年前にクラバックを捕まえ損ねたため、今もなお彼を目の敵にしているのだとか。

クラバックは全身に情熱を込め、戦うようにピアノを弾き続けました。すると、突然会場に響き渡ったのは「演奏禁止」という声でした。僕は驚いて振り返りました。その声の主は、後ろの席にいる身長の高い巡査でした。巡査は、僕が振り向いたとき、悠然と腰を下ろしたまま、再び大声で「演奏禁止」と怒鳴りました。

その瞬間、会場は大混乱に陥りました。「警官横暴!」「クラバック、弾け!」「馬鹿!」「畜生!」「引っ込め!」「負けるな!」といった声が飛び交い、椅子が倒れ、プログラムが舞い上がり、さらには誰が投げたのか、サイダーの空瓶や石ころ、かじりかけの胡瓜までが降ってきました。僕は呆然としてしまい、トックに理由を尋ねようとしましたが、トックも興奮しているようで、椅子の上に立ちながら「クラバック、弾け! 弾け!」と叫び続けています。さらに、トックの雌の河童もいつの間にか敵意を忘れ、「警官横暴」と叫んでいるのです。仕方なく、僕はマッグに向かって「どうしたのです?」と尋ねました。

「これですか? これはこの国ではよくあることですよ。元々、絵や文芸は……」

マッグは何かが飛んでくるたびに少し身を縮めながら、静かに説明を続けました。

「元々、絵や文芸は誰の目にも何を表しているかがはっきりわかるはずですから、この国では決して発売禁止や展覧禁止は行われません。その代わりにあるのが演奏禁止です。音楽だけは、どんなに風俗を壊乱する曲でも、耳のない河童には理解できませんからね。」

「でも、あの巡査は耳があるのですか?」

「さあ、それは疑問ですね。たぶん、今の旋律を聞いているうちに、細君と一緒に寝ているときの心臓の鼓動を思い出したのかもしれません。」

その間にも、大騒ぎはますます盛んになっていきました。クラバックはピアノに向かったまま、傲然と僕たちを振り返っていました。しかし、いくら傲然としていても、飛んでくるものを避けることはできません。数秒ごとに、彼の態度も変わらざるを得ませんでした。それでも、彼は大音楽家としての威厳を保ちながら、細い目を鋭く輝かせていました。僕は、危険を避けるためにトックを小盾にしていましたが、好奇心に駆られ、マッグと話し続けました。

「そんな検閲は乱暴じゃありませんか?」

「何を言っているんですか、どの国の検閲よりも進歩しているくらいですよ。たとえば、××をご覧なさい。実際、つい一月前にも……」

ちょうどこう言いかけたとき、マッグは運悪く脳天に空瓶が落ちてしまいました。「クワック」と一声叫んだ後、とうとう気を失ってしまいました。