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裸の女教授

作 海野十三 · 2026-03-31

その時だった。

「リリン、リリン、リリーン。」

警鈴が突然、澄んだ音を響かせ、密室の空気を一瞬にして明るくした。

「来たぞ、来たぞ、ついに来たのだ。棺桶の蓋を叩いている者がいる!」

棺桶の蓋を叩くと、この警鈴が鳴る仕掛けになっていた。さあ、助けが来るのだ。それに続いて、ひどい震動が伝わってきた。いよいよこの棺桶が開かれるのだ。

興奮が少し収まったとき、フルハタは、いったい誰がこの棺桶を開けに来たのか、強い好奇心を抱いた。それは、彼がいる密室の扉が開かれる直前に迫り、ますますその好奇心をかき立てた。

ドンと扉が開いた瞬間、小暗い外から一人の人間が飛び込んできた。

「えっ!」

フルハタは、驚きの声を上げた。それは、彼が再生して初めて目にする訪問者が、まったくの素裸だったからだ。文字通りの素裸であり、しかもその訪問者は、一目でわかる妙齢の女性だった。フルハタは、恥ずかしさで真っ赤になった。しかし、その女性は、顔を赤らめるどころか、平然とフルハタの前に立っていた。

「フルハタ助教授。そうですね?」

「はい、そうです。フルハタです。扉を開けてくださってありがとう。」

「一千年前の世界に住んでいた人類を、こうして発見したことは、私にとって大変嬉しいことです。あなたの記録を、百九十九区の防空計画を壊している時に見つけたのですが、長い不錆鋼鉄管の中に入っていました。」

「ああ、そうでしたか。」

フルハタは、かつて友人たちが彼の埋没記録をそうして二百本の厳重な筒に収め、各地の地下に埋めたり、博物館に展示してくれたことを思い出した。

「で、あなたの名前は何とおっしゃるのですか?」

「私のことですか?私はハバロフスク大学の考古学主任教授、チタです。」

「えっ、主任教授!失礼ながら、そんな若さで主任教授とは、すごいですね。」

率直に驚きを表したフルハタに、チタ教授は笑いながら言った。

「ほほほほ。何が若いことがありましょうか。今年で九百三回目の誕生日を迎えるのですよ。」

「えっ、つまりあなたは九百三歳なのですね。それはとても信じられません。」

まだ十九か二十の若々しい女性の姿を持ちながら、九百三歳とは、どうしても納得できなかった。果たしてそんな長寿者がいるのだろうか。

「ほほほほ。そんなことをおっしゃると、私はとても嬉しいです。千年前の人類がどんな知能を持っていたのか、今はっきり目の前に見えるようで、大変参考になります。しかし、私ばかりが喜んでいてはいけません。あなたのために、早く一千年後の今日の世界がどんなになっているか、その常識を教えて差し上げましょう。」

そう言って、チタ教授は金髪をなでながら話し始めた。人類は、今から九百年前に死の神を征服したという話だった。つまり、人類は死ななくてもよくなったのだ。なんという大発見だろう。

その理由は、人体に関する生理学の研究が進歩し、すべての病気が電気学によって診断され、電気的療法で治るようになったからだ。心臓の悪い人間は、すぐに代用心臓に取り替えることができる。血圧の高い人間は、半日ほどで血管を完全に取り替えることができる。だから、もし死ぬのが嫌なら、決して死なないのだ。

しかし、この驚くべき医学の進歩が行われた当時は、代用臓器が非常に高価であり、金属で作られていたため、相当重く、代用臓器を装着した人間は歩くことができなくなってしまった。心臓、肺、腎臓など三つの臓器を取り替えると、最初は全体の重量が人間の体重の三倍ほどになったそうで、それでは一人で歩くことはできなかった。自分で町をあちこち移動するためには、自動車に乗りっぱなしにするしかなかった。

だが、今はそんなことはない。どんどん歩けるようになった。それは代用臓器が非常に小さくなり、金属を使わずに耐圧性の人造肉を使うことで軽くなったからだ。

「だから、ほら見てごらんなさい。私の体を。少しも変じゃありませんでしょ。そしてこんなに軽快に動けますわ。」

チタ教授は、フルハタの前でまるでレビューガールのように四肢を振って動いてみせた。フルハタは、また新しい驚きに目を見張らなければならなかった。

「すると、九百三歳のあなたは、やっぱり代用臓器のおかげでそんなに長生きしているのですか?」

「もちろん、そうですわ。」

「へえ、驚きました。どこにその代用臓器があるのか、外からは分からないほどです。すると、ずいぶん代用臓器は軽くなり、小型になったわけですね。でも、変なこともありますね。チタ教授、あなたは私をからかっているのではありませんか?」

「なぜ、そんなことをおっしゃるのですか。ちっともからかっていませんわよ。」

「でも、おかしいではありませんか。そんな代用臓器を取り付けたものなら、胸のところやお腹のところに手術の痕が残っていなければならないはずです。ところが、こうして拝見したところ、あなたの肉体は十九か二十の処女のように美しい。針でついたほどの傷もない。これはどうもおかしいではありませんか。」

それを聞くと、チタ教授は、フルハタの頭脳の古さがなんと気の毒なことかというように微笑んで言った。

「フルハタさん、外科手術なんて九百五十年前にすっかり技術が完成し、傷がつかないようになりましたのよ。ですが、私の身体に傷痕がないのは、昔の外科手術のおかげというわけではなく、これは人造皮膚をつけているから、傷痕がないのです。」

「えっ、人造皮膚というと?」

「つまり人造肉と似たようなものです。人造ですから、いつでもこれを破って新しいのと貼り替えられます。」

「ははあ、そうでしたか。」

フルハタは唖然とした。さっきから、このチタ教授の素裸を見て、こちらが顔を赤らめていたわけだが、人造皮膚なら恥ずかしくないのは当然だ。

「じゃ、失礼ながら、今のあなたの身体というものは、昔、母体から生まれて大きくなったあなたの本当の身体とは、大部分違った別物なのですね。」

「まあ、そう言っても、大した間違いではありません。」

「昔のままのあなたとして残っているのは脳髄と骨格と顔かたちだけじゃないのですか?」

「いや、そうではありません。」

「じゃ、もっと残っているものがありますか?」

「いや、その反対です。いまあなたがおっしゃった顔かたちも別物です。正直に言うと、私は生まれつきあまり美人ではなかったのです。額は出っ張り、目は凹み、口は大きく、鼻は曲がっていました。そこで、私はすっかり顔を取り替えてもらいました。顔のカタログを見て、その中で一番好きな顔に直してもらったのです。顔の美醜ほど、昔の人類を悩ませたものはありません。しかし考えてみると、あの頃の人間も知恵のない話でした。顔の美醜とは、いわゆる顔を構成している要素であるところの目や眉、鼻、唇、歯の形とその配列状態によって生じるのです。目が凹んでいるなら、そこに肉を植えればいいのです。そんなことは大した手術ではありません。特に人造肉や人造皮膚ができてからは、醜い人間はどんどん顔を直して、美男美女になってしまいました。これから街へ出てみましょうか。きっとあなたは、ただの一人も醜男醜女を見つけられないでしょう。」

「おお、――」

フルハタは、言葉を失い、続けるべき言葉が見つからなかった。人間の美醜が三万年の人類史を支配してきたと思っていたが、今はいくらでも顔を変えられるようになったと聞いて、ただため息をつくしかなかった。