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四〜六 (1)

作 泉鏡花 · 2026-03-31

私は腹立ち紛れに急ぎ、山の裾を田んぼの道へと向かった。半町ほど進むと、道が急に高くなり、上り坂の一か所からは、弓形のように土でできた勅使橋が見えた。上を見上げながら足を踏み入れたその瞬間、以前の薬売りがすたすたとやって来て、私を追い越した。

特に言葉を交わすこともなく、彼は私を無視して前へ進み、小山のような道の先で蝙蝠傘を差し立てたまま、下りて見えなくなった。

その後、私は爪先立ちで上り、また太鼓の胴のような道に体を乗せた。売薬は先に下りて立ち止まり、周囲を見回している様子だった。何かを考えているようだったが、よく見るとその先には道が二つに分かれていた。一つは急な上り坂で、両側には草が生い茂っている。路傍の角には、四抱え、いや五抱えもあろうという一本の檜があり、その背後には大きな岩がいくつも並んでいた。

私が思い描いたのは、今まで歩いてきた広くてなだらかな道が正しい本道で、あと二里ほど進めば山に至り、そこから峠になるはずだった。

しかし、目の前の檜は、何もない道を横切って見えない田んぼの中空に虹のように突き出ていた。その根元の土が崩れ、大きな鰻のような根が無数に露出している。根から一筋の水が流れ出て、道の真ん中に広がっていた。そのため、田んぼが湖にならないのが不思議で、流れは堂々としていた。前方には一叢の藪が見え、その境を越えれば約二町ほどの間はまるで川のようだった。石はばらばらに散らばり、飛び石のように大跨ぎで渡れそうだったが、やはり人の手で並べられたに違いなかった。

衣服を脱いで渡るほどの大事ではないが、本街道には少し難儀すぎて、馬が歩くには適さない道だった。

売薬も迷ったのだろうと思いながら、私は思い切って右の坂を上り始めた。檜を抜けると、私は体を前に出して下を見下ろした。

「おいおい、松本へ出る道はこっちだよ」と無造作に五六歩進んだ。

岩の頭に半身を乗り出し、「茫然としていると、木精が攫うぜ、昼間だって容赦はないよ」と嘲るように言い捨てたが、やがて岩の陰に入って高い草に隠れた。

しばらくすると、蝙蝠傘の先が見え、木の枝とすれすれになって茂みの中に消えていった。

「どっこいしょ」と陽気な声を上げながら、その流れの石の上を飛び跳ねてきたのは、茣蓙を背負った何も持たない百姓だった。

さっきの茶店からここまで、売薬以外には誰にも会わなかったことは言うまでもない。別れ際に声をかけられたので、先方は道中の商売人だと思ったが、まさかと思いながらも気迷いがした。今朝も立ち寄った際にしっかり見てきた、前に話した図面をここでも開こうとしていたところだった。

「ちょいと伺いたいのですが、」

「これは何でござりまする?」と山国の人は、特に出家を見ると丁寧に尋ねてくれる。

「いえ、お伺いするまでもございませんが、道はやっぱりこれを素直に行くのでしょうな。」

「松本へ行かれる?ああ、本道じゃ。この間の梅雨で水が出て、とてつもない川ができたでがすよ。」

「まだずっとどこまでもこの水が続くのでしょうか。」

「何のお前様、見たばかりじゃ、訳はござりません、水になったのは向こうのあの藪までで、後はやっぱりこれと同じ道筋で山まで荷車が通るでがす。藪のあるのは旧大きいお邸の医者様の跡でな、ここいらはこれでも一つの村でがした。十三年前の大水の時、から一面に野良になりましたよ、人死もいけえこと。ご坊様、歩きながらお念仏でも唱えてやってくれさっしゃい。」と、問わぬことまで深く話してくれた。それでよく事情がわかり、確かになったが、現に一人踏み迷った者がいる。

「こちらの道はどこへ行くのでしょうか?」と、売薬の入った左手の坂を尋ねてみた。

「はい、これは五十年ばかり前までは人が歩いていた旧道でがす。やっぱり信州へ出まする。先は一つで七里ばかり近いですが、今時往来ができるのじゃあござりません。去年もご坊様、親子連れの巡礼が間違えて入ったというで、大変なことになった。乞食を見たような者じゃというて、人命に代わりはねえ、追いかけて助けようと、巡査様が三人、村の者が十二人、一組になって押し登って、やっと連れて戻ったくらいでがす。ご坊様も血気に逸って近道をしてはなりませんぞ、草臥れて野宿をしてからここを行くよりはましでござるに。はい、気をつけて行かっしゃれ。」

ここで百姓に別れ、川の石の上を行こうとしたが、ふと売薬の身の上が気になった。まさかに聞いたほどでもないが、それが本当なら見殺しだ。どの道、私は出家の身、日が暮れるまでに宿に着いて屋根の下で寝る必要がある。追いついて引き戻してやろう。間違って旧道を歩いても怪しむことはない。この時期、狼の旬でもなく、魑魅魍魎の気配でもない。ままよ、と思いながら見送ると、早や深切な百姓の姿も見えなくなった。

「よし。」

思い切って坂道を取った。侠気があったわけではない、血気に逸ったわけでもない。今言ったように、ずっと悟ったようだが、実はなかなかの臆病者で、川の水を飲むのさえ気が怯けたほど命が大事だった。なぜまたと言われれば、ただ挨拶をしたばかりの男なら、私は実のところ、打棄っておいたに違いないが、快からぬ人と思ったから、そのままで見捨てるのが故とするようで、気が責めてならなかった。

宗朝は、やはり俯向けに床に入ったまま合掌していた。

「それでは、口で唱える念仏だけでは足りないと思うのです。」