注文の多い料理店 (1) (2)
作 宮沢賢治
「当店は注文の多い料理店ですので、その点をどうかご理解ください。」
「なかなか賑わっているね。こんな山の中で。」
「そうだね。見てごらん、東京の大きな料理屋だって大通りにはあまりないだろう。」
二人はそう言いながら、扉を開けました。すると、その裏側に、
「注文はたくさんありますが、どうか一つ一つお待ちください。」
と書かれていました。
「これは一体どういうことだ?」一人の紳士は顔をしかめました。
「うん、きっと注文が多くて、準備に手間取っているから、こういうことなんだろう。」
「そうだな。早くどこかの部屋に入りたいものだ。」
「そして、テーブルに座りたいね。」
ところが、さらにもう一つ扉がありました。その横には鏡がかかっていて、その下には長い柄のブラシが置かれていました。
扉には赤い字で、
「お客様、ここで髪を整え、靴の泥を落としてください。」
と書かれていました。
「これは確かにもっともだ。さっき玄関で、山の中だと思って軽く見ていたよ。」
「作法が厳しいお店だ。きっと相当偉い方々が、頻繁に訪れるんだろう。」
二人はきれいに髪を整え、靴の泥を落としました。
すると、どうでしょう。ブラシを板の上に置いた途端、それがふっとかすんで消えてしまい、風がどっと室内に入ってきました。
二人は驚いて、互いに寄り添いながら扉をがたんと開けて、次の部屋へと進みました。早く何か温かいものを食べて、元気をつけておかないと、もう大変なことになってしまうと、二人とも思ったのでした。
扉の内側には、また変わったことが書いてありました。
「鉄砲と弾丸をここに置いてください。」
見ると、すぐ横に黒い台がありました。
「なるほど、鉄砲を持って食事をするというのはおかしいね。」
「いや、相当偉い方がいつも来ているんだ。」
二人は鉄砲を外し、帯の皮を解いて、それを台の上に置きました。
さらに黒い扉がありました。
「どうか帽子と外套、靴をお取りください。」
「どうする?脱ぐか。」
「仕方ない、脱ごう。確かに相当偉い方が奥にいるみたいだ。」
二人は帽子とオーバーコートを釘にかけ、靴を脱いでぺたぺたと音を立てながら扉の中に入りました。
扉の裏側には、
「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金属類、特に尖ったものは、すべてここに置いてください。」
と書かれていました。扉のすぐ横には黒塗りの立派な金庫が、ちゃんと口を開けて置いてありました。鍵まで添えてありました。
「ははあ、何かの料理に電気を使うみたいだね。金属のものは危ない。特に尖ったものは危険だということだろう。」
「そうだね。すると、勘定は帰りにここで払うのかな。」
「どうもそうらしい。」
「そうだ、きっと。」
二人は眼鏡を外したり、カフスボタンを外したりして、すべて金庫の中に入れ、ぱちんと錠をかけました。
少し進むと、また扉があり、その前にはガラスの壺が一つありました。扉にはこう書いてありました。