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四十二〜四十三

作 夏目漱石

私はKと並んで歩きながら、彼の次の言葉を心の中で待ち構えていました。ある意味、待ち伏せとも言えるかもしれません。その時の私は、たとえKを騙すことになっても構わないと思っていたのです。しかし、私にも良心はありました。もし誰かが私のそばに来て、「お前は卑怯だ」と一言でも言ってくれたなら、その瞬間に我に返ったかもしれません。もしその人がKであったなら、私はおそらく彼の前で赤面したでしょう。けれど、Kは私を叱るにはあまりにも正直で、あまりにも単純で、人格が善良でした。目がくらんだ私は、彼に対する敬意を忘れ、逆にその純粋さを利用しようとしたのです。

しばらくして、Kは私の名前を呼び、私の方を見ました。私も自然と足を止めました。すると、Kも止まりました。その瞬間、私はやっとKの目を真っ直ぐに見ることができました。Kは私より背が高い男でしたので、私は彼の顔を見上げるようにしなければなりませんでした。その態度で、私はまるで狼が無邪気な羊に向かうような心情を抱いていました。

「もうその話はやめよう」と彼が言いました。彼の目にも言葉にも、どこか悲痛な響きがありました。私は少し挨拶をすることもできませんでした。するとKは、「やめてくれ」と今度は頼むように言い直しました。私はその時、彼に対して残酷な返事をしました。まるで狼が隙を見て羊の喉に食いつくように。

「やめてくれって、僕が言い出したことじゃない、元々君の方から持ち出した話じゃないか。でも、君がやめたいならやめてもいいけど、ただ口先だけでやめたって意味がない。君の心でそれを止める覚悟がなければ、一体君はどうするつもりなんだ?」

私がこう言った時、背の高い彼は自然と私の前で萎縮し、小さくなるように感じました。彼はいつも話す通り、非常に頑固な男でしたが、一方で人一倍正直者でしたから、自分の矛盾を厳しく非難されると、決して平気ではいられない性質だったのです。私は彼の様子を見て、ようやく安心しました。すると彼は突然「覚悟?」と尋ねました。そして私がまだ何も答えないうちに、「覚悟、――覚悟ならないこともない」と付け加えました。彼の調子は独り言のようで、まるで夢の中の言葉のようでした。

二人はそれ以上話を切り上げて、小石川の宿の方へ足を向けました。比較的風のない暖かな日でしたが、冬のことですから公園の中は寂しいものでした。特に霜に打たれて青みを失った杉の木立が、薄暗い空の中に立ち並んでいるのを振り返った時、寒さが背中に食い込むような気持ちになりました。私たちは夕暮れの本郷台を急ぎ足で通り抜け、向こうの岡へ上るために小石川の谷へ下りました。その頃になって、ようやく外套の下に体の温もりを感じ始めました。

急いだためもあったのでしょうが、私たちは帰り道、ほとんど口を利きませんでした。家に帰って食卓に向かった時、奥さんがどうして遅くなったのかと尋ねました。私はKに誘われて上野へ行ったと答えました。奥さんはこの寒いのにと驚いた様子を見せました。お嬢さんは上野に何があったのかと聞きたがりますが、私は何もない、ただ散歩しただけだと返事しました。普段から無口なKは、いつもよりなお黙っていました。奥さんが話しかけても、お嬢さんが笑っても、ろくな挨拶もしませんでした。それから彼は飯を呑み込むように掻き込んで、私がまだ席を立たないうちに自分の部屋へ引き上げてしまいました。

「その頃は覚醒とか新しい生活という言葉がまだ存在しない時代でした。しかしKが古い自分をあっさりと捨て去って、一意に新しい方向へ走り出さなかったのは、現代人の考えが彼に欠けていたからではありません。彼には投げ出すことのできないほど尊い過去があったからです。彼はそのために今日まで生きてきたと言ってもいいくらいです。だからKが一直線に愛の目的に向かって猛進しないからといって、その愛が生ぬるいことを証明するわけにはいきません。いくら激しい感情が燃えていても、彼はむやみに動けないのです。前後を忘れるほどの衝動が起こる機会を与えられない限り、Kはどうしても少し踏み留まって自分の過去を振り返らざるを得なかったのです。そうすると、過去が指し示す道を今まで通り歩かなければならなくなるのです。その上、彼には現代人が持たない頑固さと我慢がありました。私はこの二つの点において、彼の心をよく見抜いていたつもりです。

上野から帰った晩は、私にとって比較的安静な夜でした。私はKが部屋に引き上げた後を追いかけ、彼の机のそばに座り込みました。そして取り留めもない世間話をわざと彼に仕向けました。彼は迷惑そうでした。私の目には勝利の色が少し輝いていたでしょうし、私の声には確かに得意の響きがありました。私はしばらくKと一つの火鉢に手をかざした後、自分の部屋に帰りました。外のことに関しては何をしても彼に及ばなかった私も、その時だけは恐れるに足りないという自覚を彼に対して持っていました。

私はほどなく穏やかな眠りに落ちました。しかし突然、私の名を呼ぶ声で目を覚ましました。見ると、襖が二尺ほど開いて、そこにKの黒い影が立っています。そして彼の部屋には、夜の通りまだ灯火が点いていました。急に世界が変わった私は、しばらく口を利くこともできず、ぼんやりとその光景を眺めていました。

その時、Kはもう寝たのかと尋ねました。Kはいつでも遅くまで起きている男でした。私は黒い影法師のようなKに向かって、何か用かと聞き返しました。Kは大した用でもない、ただもう寝たか、まだ起きているかと思って、トイレに行ったついでに聞いてみただけだと答えました。Kは洋燈の光を背中に受けているので、彼の顔色や目つきは全く私には分かりませんでした。しかし、彼の声は普段よりもかえって落ち着いているように感じました。

Kは静かに襖を閉め、私の部屋は再び暗闇に包まれました。私はその暗闇の中で、静かな夢を見ようと目を閉じました。それ以降のことは何も覚えていません。しかし、翌朝になって昨晩の出来事を思い返すと、何だか不思議な気持ちがしました。もしかしたら、すべてが夢だったのではないかと考えたのです。

朝食をとる際、私はKにそのことを尋ねました。彼は確かに襖を開けて私の名前を呼んだと答えました。なぜそんなことをしたのかと聞くと、彼は明確な返事をしませんでした。しばらくして、Kは最近は熟睡できているのかと逆に私に問いかけてきました。その言葉に、私は何か変な気持ちを抱きました。

その日、ちょうど同じ時間に講義が始まる予定だったため、二人は一緒に家を出ました。昨晩の出来事が気にかかっていた私は、途中で再びKにそのことを追及しました。しかし、Kはやはり私を満足させるような答えを返してはくれませんでした。私は、あの事件について何か話すつもりはなかったのかと念を押してみましたが、Kは強い口調で「そうではない」と言い切りました。まるで「昨日上野で『その話はもう止めよう』と言ったではないか」と私に注意しているように聞こえました。Kはそういう点に関して非常に自尊心の強い男なのです。

その瞬間、私は彼が使った「覚悟」という言葉を思い出しました。それまで全く気に留めていなかったその二字が、妙な力を持って私の頭を押さえつけ始めたのです。