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十一〜十二

作 芥川龍之介

阿呆はいつも、自分以外の誰かを阿呆だと信じている。

我々が自然を愛するのは、自然が我々を憎んだり嫉妬したりしないからだとも言える。

最も賢い生き方とは、一時代の習慣を軽蔑しつつも、その習慣を少しも破らずに暮らすことだ。

我々が最も誇りたいものは、実は我々が持っていないものだけである。

誰も偶像を壊すことに異議を唱えることはないし、同時に誰も偶像になることに異議を唱えることもない。しかし、偶像の台座の上に安んじて座ることができる者は、最も神々に恵まれた者、すなわち阿呆か、悪人か、英雄である。(クラバックはこの章の上に爪の痕を残していた。)

我々の生活に必要な思想は、三千年前に尽きたのかもしれない。我々はただ古い薪に新しい炎を加えるだけなのだ。

我々の特徴は、我々自身の意識を超越することに常にある。

幸福は苦痛を伴い、平和は倦怠を伴うとすれば、どうなるのだろう?

自己を弁護することは、他人を弁護することよりも難しい。疑う者は、弁護士を見よ。

矜持、愛欲、疑念――あらゆる罪は三千年来、この三者から生じている。同時におそらく、あらゆる徳もまた。

物質的欲望を減らすことは必ずしも平和をもたらさない。我々は平和を得るためには、精神的欲望も減らさなければならない。(クラバックはこの章の上にも爪の痕を残していた。)

我々は人間よりも不幸である。人間は河童ほど進化していない。(この章を読んだとき、思わず笑ってしまった。)

成すことは成し得ることであり、成し得ることは成すことである。結局、我々の生活はこうした循環論法から逃れることはできない。すなわち、不合理に終始しているのだ。

ボードレールは白痴になった後、彼の人生観をたった一語、女陰という言葉で表現した。しかし、彼自身を語るものは必ずしもこう言ったことではない。むしろ彼の天才、彼の生活を維持するに足る詩的天才に信頼したために、胃袋という言葉を忘れたのだ。(この章にもやはりクラバックの爪の痕が残っていた。)

もし理性に終始するならば、我々は当然、自らの存在を否定しなければならない。理性を神にしたヴォルテールの幸福に一生を終えたのは、すなわち人間が河童よりも進化していないことを示すものである。

ある寒い午後、僕は「阿呆の言葉」を読み飽きてしまったので、哲学者のマッグを訪ねることにした。すると、ある寂しい町の角に、蚊のように痩せた河童がぼんやりと壁に寄りかかっていた。それは間違いなく、以前僕の万年筆を盗んだ河童だった。僕は思わず心躍り、ちょうど通りかかったたくましい巡査を呼び止めた。

「ちょっとあの河童を取り調べてください。あの河童は一月ほど前に、僕の万年筆を盗んだんです。」

巡査は右手の棒を上げ、この国の巡査は剣の代わりに水松の棒を持っている。「おい、君」とその河童に声をかけた。僕はその河童が逃げ出さないか心配していたが、意外にも落ち着いて巡査の前に歩み寄った。しかも腕を組んだまま、傲然と僕や巡査の顔をじろじろ見ている。だが、巡査は怒ることもなく、腹の袋から手帳を取り出して尋問を始めた。

「お前の名は?」

「グルック。」

「職業は?」

「つい二、三日前までは郵便配達夫をしていました。」

「よろしい。では、この人の申し立てによれば、君はこの人の万年筆を盗んだということだが。」

「ええ、一月ほど前に盗みました。」

「何のために?」

「子どもの玩具にしようと思ったのです。」

「その子どもは?」

巡査は初めて相手の河童に鋭い目を向けた。

「一週間前に死んでしまいました。」

「死亡証明書を持っているか?」

痩せた河童は腹の袋から一枚の紙を取り出した。巡査はその紙に目を通すと、急ににやにや笑いながら相手の肩を叩いた。

「よろしい。どうも御苦労だったね。」

僕は呆然と巡査の顔を見つめていた。そのうちに痩せた河童は何かぶつぶつと呟きながら、僕たちを背にして去って行った。僕はやっと気を取り直し、巡査に尋ねてみた。

「どうしてあの河童を捕まえないのです?」

「あの河童は無罪ですよ。」

「でも、僕の万年筆を盗んだのは……」

「子どもの玩具にするためだったのでしょう。しかし、その子どもはもういないのです。もし何か疑問があるなら、刑法千二百八十五条を調べてみなさい。」

巡査はそう言い残し、さっさとどこかへ行ってしまった。仕方なく、僕は「刑法千二百八十五条」を口の中で繰り返しながら、マッグの家へ急いだ。哲学者のマッグは客好きで、今日も薄暗い部屋には裁判官のペップや医者のチャック、硝子会社の社長ゲエルなどが集まり、七色の色硝子のランタンの下で煙草の煙を立ち昇らせていた。裁判官のペップが来ているのは、僕にとって何よりも好都合だった。僕は椅子にかけるや否や、刑法第千二百八十五条を調べる代わりに、さっそくペップに問いかけた。

「ペップ君、失礼ですが、この国では罪人を罰しないのですか?」

ペップは金口の煙草の煙を悠然と吹き上げてから、いかにもつまらなそうに答えた。

「罰しますとも。死刑さえ行われるくらいですからね。」

「でも、僕は一月ほど前に……」

僕は事情を話した後、例の刑法千二百八十五条について尋ねた。

「ふむ、それはこういうことです。――『いかなる犯罪を行なったとしても、該犯罪を行なわせた事情が消失した後は該犯罪者を処罰することはできない』つまり、あなたの場合で言えば、その河童はかつては親だったのですが、今はもう親ではありませんから、犯罪も自然と消滅するのです。」

「それはどうも不合理ですね。」

「常識を語るのはやめてください。親である河童も、親でない河童も、同じように見るのは不合理です。そう、日本の法律では同じように扱われているのですね。それは私たちには滑稽に思えます。ふふふふふふ。」

ペップは巻きタバコを投げ捨て、無関心な薄笑いを浮かべていました。そこに口を挟んだのは、法律とは無縁なチャックです。チャックは少し鼻の金具を直し、僕に質問しました。

「日本にも死刑はあるのですか?」

「ありますよ。日本では絞首刑です。」

僕は冷静に構えているペップに少し反感を抱いていたので、この機会に皮肉を言ってやりました。

「この国の死刑は、日本よりも文明的に行われているのでしょうね?」

「もちろん、文明的です。」

ペップはやはり落ち着いていました。

「この国では絞首刑などは使いません。まれに電気を使うこともありますが、ほとんどの場合、電気も使いません。ただ、その犯罪の名を告げるだけです。」

「それだけで河童は死ぬのですか?」

「死にますとも。我々河童の神経は、あなた方のものよりも繊細ですから。」

「それは死刑だけではありません。殺人にも同じ手法が使われることがあります――」

社長のゲエルは、色硝子の光に照らされて顔が紫に染まりながら、親しげな笑顔を見せました。

「この間も、ある社会主義者に『貴様は盗人だ』と言われたために、心臓麻痺を起こしかけたのです。」

「それは意外に多いようですね。私が知っていたある弁護士も、やはりその言葉で亡くなってしまったのですから。」

僕はこう言った河童、哲学者のマッグを振り返りました。マッグはいつものように皮肉な微笑を浮かべたまま、誰の顔も見ずに話し続けています。

「その河童は、誰かに蛙だと言われて――もちろんあなたもご存知でしょう、この国で蛙と言われるのは人間ではないという意味です――自分は蛙なのか、蛙ではないのかと毎日考え続け、とうとう死んでしまったのです。」

「それはつまり自殺ですね。」

「もっとも、その河童を蛙だと言ったやつは、殺すつもりで言ったのですがね。あなた方の目から見れば、それも自殺ということになる……」

ちょうどマッグがそう言った時、突然、その部屋の壁の向こうから、詩人のトックの家に響く鋭いピストルの音が一発、空気を切り裂くように響き渡りました。