山月記 (1)
作 中島敦 · 2026-03-31
隴西の李徴は、博学で才能に恵まれた青年だった。天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、江南尉に任命されたが、彼の性格は頑固で、自分に対する自信が非常に強かった。彼は賤しい役人として生きることを潔しとせず、しばらくして官を退くと、故郷に帰り、ひたすら詩作に没頭する日々を送った。俗悪な大官の前にひざまずくくらいなら、詩人としての名を死後百年に残そうと決意したのだ。
しかし、文名はなかなか上がらず、生活は日々厳しくなっていった。李徴は次第に焦りを感じるようになり、その容貌も険しくなっていった。肉が落ち、骨が目立つようになり、かつて進士に合格した際の美少年の面影は、どこにも見当たらなかった。数年後、貧困に耐えかね、妻子のために再び東へ向かい、地方官吏の職に就くことになった。これは、彼が詩業に半ば絶望したためでもあった。かつての同輩たちはすでに高位に昇り、彼が昔、無視していた者たちの命令を受けなければならない状況が、往年の才子李徴の自尊心を深く傷つけたのは想像に難くない。彼は楽しむことができず、狂気じみた性格はますます抑えきれなくなっていた。
一年後、公用で旅に出た際、汝水のほとりに宿泊した時、ついに発狂してしまった。ある夜半、急に顔色を変え、寝床から起き上がると、訳の分からないことを叫びながら闇の中へ駆け出していった。彼は二度と戻ってこなかった。周囲の山野を捜索しても、何の手がかりも見つからなかった。その後、李徴がどうなったのかを知る者は、誰もいなかった。
翌年、監察御史の袁という者が、勅命を受けて嶺南に向かう途中、商於の地に宿泊した。翌朝、まだ暗い中で出発しようとしたところ、駅吏が言うには、これから先の道に人食い虎が出るため、旅人は白昼でなければ通れないということだった。今はまだ朝が早いので、もう少し待つようにと勧められたが、袁は供回りの多勢を頼りに、駅吏の言葉を無視して出発した。
残月の光を頼りに林の中の草地を進んでいくと、果たして一匹の猛虎が茂みから飛び出してきた。虎は袁に飛びかかるかと思われたが、すぐに身を翻して元の茂みに隠れてしまった。その茂みの中から「危ないところだった」と人間の声が繰り返し聞こえてきた。その声に袁は聞き覚えがあった。驚きと恐怖の中で、彼は瞬時に思い当たり、叫んだ。「その声は、我が友、李徴ではないか?」
袁は李徴と同年に進士の試験に合格し、友人の少なかった李徴にとって、最も親しい友だった。温和な袁の性格が、峻厳な李徴の性情と衝突しなかったのだろう。
茂みの中からは、しばらく返事がなかった。しのび泣きのような微かな声が時折漏れるだけだった。やがて低い声が答えた。「確かに自分は隴西の李徴である。」
袁は恐怖を忘れ、馬から下りて茂みに近づき、懐かしさで胸がいっぱいになりながら久しぶりの再会を喜んだ。そして、なぜ茂みから出てこないのかと尋ねた。李徴の声は答えた。「今や自分は異類の身となっている。どうして、恥ずかしい姿を故人の前にさらすことができようか。さらに、自分が姿を現せば、必ず君に恐れや嫌悪の感情を抱かせるに違いない。しかし、今、偶然にも君に会えたことが嬉しくて、恥じらいの気持ちも忘れるほど懐かしい。どうか、ほんの少しの間だけでも、私の醜い姿を気にせず、かつての友李徴と話をしてくれないだろうか。」
後になって考えれば不思議だったが、その時、袁はこの超自然の出来事を素直に受け入れ、少しも疑おうとはしなかった。彼は部下に命じて行列を止め、自らは茂みのそばに立って、見えない声と対話を始めた。都の噂や旧友の消息、袁の現在の地位に対する李徴の祝辞など、青年時代に親しかった者同士の隔てのない語調で語られた後、袁は李徴がどうして今の身となったのかを尋ねた。草中の声は次のように語った。
約一年ほど前、私は旅に出て汝水のほとりに泊まった夜のことを思い出す。夜中に目を覚ますと、外で誰かが私の名を呼んでいる声が聞こえた。声に導かれるように外に出てみると、闇の中から私を招く声が響いていた。気がつくと、私は無我夢中でその声を追いかけて走り出していた。
走るうちに、いつの間にか道は山林の中に入り、知らず知らずのうちに両手で地面を掴みながら駆けていた。身体中に力が満ちているような感覚で、軽々と岩を跳び越えていった。ふと気がつくと、手先や肘のあたりに毛が生えているようだった。少し明るくなってから、谷川の水面に映る自分の姿を見たとき、私はすでに虎になっていた。
最初は目を疑った。次に、これは夢に違いないと思った。夢の中で「これは夢だ」と気づくような夢を見たことがあったからだ。しかし、どうしても夢ではないと悟らなければならない時、私は茫然とした。そして、恐れが押し寄せた。全く、どんなことでも起こり得るのだと思い、深く恐れた。しかし、なぜこんなことになったのか、全く分からなかった。私たちには、何事も理解できないまま受け入れ、理由も分からずに生きていく運命があるのだ。
私はすぐに死を考えた。しかし、その時、目の前を一匹の兎が駆け抜けるのを見た瞬間、私の中の人間は忽然と姿を消した。再び目を覚ましたとき、私の口は兎の血に染まり、周りには兎の毛が散らばっていた。これが虎としての最初の経験だった。それ以来、私はどんな行いを続けてきたのか、到底語ることはできない。ただ、一日の中で必ず数時間は人間の心が戻ってくる。その時には、かつての日と同じように人語を操り、複雑な思考もでき、経書の章句を唱えることもできる。
その人間の心で、虎としての自分の残虐な行いを振り返る時が、最も情けなく、恐ろしく、憤りを感じる瞬間だ。しかし、その人間に戻る数時間も、日が経つにつれて次第に短くなっていく。今までは、どうして虎になったのかと疑問に思っていたのに、最近ふと気がつくと、どうして以前は人間だったのかと考えていた。これは恐ろしいことだ。もう少し経てば、私の中の人間の心は獣としての習慣に完全に埋もれて消えてしまうだろう。まるで古い宮殿の礎が次第に土に埋もれていくように。そうなれば、私は自分の過去を忘れ、一匹の虎として狂い回り、今日のように君と出会っても、故人と認めることなく、君を裂いて食べても何の悔いも感じないだろう。
そもそも、獣でも人間でも、もとは何か他のものだったのではないか。初めはそれを覚えているが、次第に忘れてしまい、初めから今の形のものだったと思い込んでいるのではないか?いや、そんなことはどうでもいい。私の中の人間の心が完全に消えてしまえば、恐らくその方が私は幸せになれるだろう。しかし、私の中の人間は、そのことをこの上なく恐ろしく感じているのだ。ああ、どれほど恐ろしく、悲しく、切なく思っていることだろう!自分が人間だった記憶がなくなることを。この気持ちは誰にも分からない。誰にも分からない。私と同じ身の上になった者でなければ。
ところで、そうだ。私がすっかり人間でなくなる前に、一つ頼んでおきたいことがある。
袁はじめ一行は、息をのんで叢中の声の語る不思議に聞き入っていた。声は続けて言った。
「他でもない。私は元々詩人として名を成すつもりでいた。しかし、業未だ成らざるうちに、この運命に至ってしまった。かつて作った詩は数百篇、当然、まだ世に出ていない。遺稿の所在ももう分からなくなっているだろう。しかし、その中には今もなお記憶しているものが数十篇ある。これを私のために伝録してほしいのだ。何も、これに従って一人前の詩人面をしたいわけではない。作品の巧拙はどうでもよい。とにかく、私が生涯執着したものを、一部でも後代に伝えないままでは、死んでも死に切れないのだ。」
袁は部下に命じ、筆を執って叢中の声に従って書き取らせた。李徴の声は叢の中から朗々と響いた。長短およそ三十篇、格調高雅で意趣卓逸な作品ばかりで、一読して作者の非凡な才を思わせるものだった。しかし、袁は感嘆しながらも漠然と次のように感じていた。確かに、作者の素質は第一流に属するものであることは疑いない。しかし、このままでは、第一流の作品となるには、どこか非常に微妙な点で欠けているのではないか、と。
旧詩を吐き終えた李徴の声は、突然調子を変え、自らを嘲るかのように言った。
「恥ずかしいことだが、今でも、こんな惨めな身となった今でも、私は、自分の詩集が長安の風流人士の机の上に置かれている様子を夢に見ることがあるのだ。岩窟の中に横たわって見る夢にだよ。笑ってくれ。詩人になり損ねて虎になった哀れな男を。」(袁は昔の青年李徴の自嘲癖を思い出しながら、悲しく聞いていた。)そうだ。お笑い草ついでに、今の懐を即席の詩に述べてみようか。この虎の中に、まだかつての李徴が生きている証として。
袁は再び下吏に命じてこれを書き取らせた。その詩にはこうあった。