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十四〜十五

作 夏目漱石

私はお嬢さんが立ち去った後、ほっと一息つくのだった。しかし同時に、物足りなさや申し訳なさのような気持ちが胸をよぎった。もしかしたら、私は女らしかったのかもしれない。今の若者たちから見れば、さらにそう映るだろう。しかし、当時の私たちは大抵そんなものだった。

奥さんは滅多に外出することがなかった。たまに家を留守にする時でも、お嬢さんと私を二人きりにすることはなかった。それが偶然なのか、故意なのか、私にはわからなかった。私の口から言うのは変かもしれないが、奥さんの様子をよく観察していると、どうやら私とお嬢さんを近づけたがっているように見えることもあった。しかし、ある時には私に対して警戒心を抱いているようにも感じられたので、初めてこうした状況に直面した私は、時折心がざわついた。

私は奥さんの態度をどちらかに決めてほしかった。頭で考えれば、それは明らかな矛盾だった。しかし、叔父に裏切られた記憶がまだ新しい私は、もう一歩踏み込んだ疑念を抱かずにはいられなかった。奥さんの態度のどちらかが本当で、どちらかが偽りだろうと推測したが、判断に迷うばかりで、なぜそんな奇妙なことをするのか、その意味が理解できなかった。理由を考えようとしても思いつかず、罪を「女」という一言に押し付けて我慢したこともあった。結局、女だからこうなのだ、女というものはどうせ愚かなものだと考えが行き詰まった。

それほど女を見下していた私が、どうしてもお嬢さんを見下すことができなかった。私の理屈は、その人の前では全く通用しなかった。私は彼女に対して、ほとんど信仰に近い愛を抱いていたのだ。私が宗教に使うこの言葉を若い女性に当てはめるのを見て、あなたは驚くかもしれないが、今でも私は固く信じている。本当の愛は宗教心とそう違ったものではないと。お嬢さんの顔を見るたびに、自分が美しくなるような気持ちがした。お嬢さんのことを考えると、気高い気分がすぐに自分に乗り移ってくるように思えた。もし愛という不可思議なものに両端があって、高い端には神聖な感情が働き、低い端には性欲が動いているとすれば、私の愛は確かにその高い極点を捉えたものだった。私はもちろん人間として肉体を持っていたが、お嬢さんを見る私の目や、お嬢さんを考える私の心は、全く肉の臭いを帯びていなかった。

私は母に対して反感を抱きつつ、子に対する恋愛の度を増していったため、三人の関係は下宿し始めた頃よりも次第に複雑になっていった。もっとも、その変化はほとんど内面的で、外には現れなかった。そんな中、あるきっかけから、今まで奥さんを誤解していたのではないかという気持ちが湧いてきた。奥さんの私に対する矛盾した態度が、どちらも偽りではないのだろうと考え直すようになったのだ。その上、それが互い違いに奥さんの心を支配するのではなく、いつでも両方が同時に奥さんの胸に存在しているのだと思うようになった。つまり、奥さんはできるだけお嬢さんを私に近づけようとしていながら、同時に私に警戒を加えているのは矛盾のように見えるが、その警戒を加える際に片方の態度を忘れるのでも翻すのでもなく、やはり依然として二人を近づけたがっていたのだと観察したのだ。ただ、自分が正当と認める程度以上に、二人が密着するのを忌むのだと解釈した。お嬢さんに対して、肉の方面から近づく気持ちがなかった私は、その時、入らぬ心配だと思った。しかし、奥さんを悪く思う気持ちはそれからなくなった。

私は奥さんの態度をいろいろと総合してみて、私がこの家で十分に信用されていることを確かめた。しかも、その信用は初対面の時からあったのだという証拠さえ見つけた。他を疑い始めた私の胸には、この発見が少し奇異に響いた。私は男に比べて女の方が直感に富んでいるのだろうと思った。同時に、女が男のために欺かれるのもここにあるのではないかと思った。奥さんをそう観察する私が、お嬢さんに対して同じような直感を強く働かせていたのだから、今考えるとおかしい。私は他を信じないと心に誓いながら、絶対にお嬢さんを信じていたのだ。それでいて、私を信じている奥さんを奇異に思ったのだから。

私は故郷のことについてあまり多くを語らなかった。特に今回の事件については何も言わなかった。思い出すだけで一種の不愉快を感じていたからだ。なるべく奥さんの方の話だけを聞こうと努めたが、向こうはそれを承知しなかった。何かにつけて、私の故郷の事情を知りたがるのだ。私はとうとう何もかも話してしまった。二度と故郷には帰らない。帰っても何もない、あるのはただ父と母の墓ばかりだと告げた時、奥さんは大変感動した様子を見せた。お嬢さんは泣いた。私は話して良かったと思い、嬉しかった。

私のすべてを聞いた奥さんは、まるで自分の直感が的中したと言わんばかりの顔をし始めた。それからは私を自分の親戚に当たる若い者か何かを扱うように接してくれた。私は腹も立たなかった。むしろ愉快に感じたくらいだ。しかし、そのうちに私の猜疑心がまた芽生えてきた。

私が奥さんを疑い始めたのは、ごく些細なことからだった。しかし、その些細なことを重ねていくうちに、疑惑は次第に根を張っていった。どういう拍子か、ふと奥さんが叔父と同じような意味で、お嬢さんを私に近づけようとしているのではないかと考え始めた。すると、今まで親切に見えていた人が、急に狡猾な策略家として私の目に映ってきた。私は苦々しい唇を噛んだ。

奥さんは最初から、無人で淋しいこの場所に客を置いて世話をするのだと公言していました。私もそれを嘘だとは思いませんでした。懇意になって様々な話を打ち明けた後でも、彼女の言葉には間違いがないように感じられました。しかし、一般の経済状況は決して豊かではありませんでした。利害関係から考えると、私と特別な関係を持つことは、彼女にとって決して損ではなかったのです。

私はさらに警戒を強めました。けれども、娘に対して抱いている強い愛情を持っている私が、その母に対してどれだけ警戒を強めても、何の意味があるのでしょうか。私は一人で自分を嘲笑しました。「馬鹿だな」と自分を罵ったこともあります。しかし、それだけの矛盾であれば、いくら馬鹿でも私は大した苦痛を感じずに済んだのです。私の悩みは、奥さんと同じようにお嬢さんも策略家ではないかという疑念から始まりました。二人が私の背後で打ち合わせをし、全てを計画しているのではないかと思うと、急に苦しくてたまらなくなります。不愉快なのではありません。まるで絶体絶命のような行き詰まった心持ちになるのです。それでも、私は一方でお嬢さんを固く信じて疑わなかったのです。だから、私は信念と迷いの狭間に立ち、少しも動くことができなくなってしまいました。どちらも想像であり、またどちらも真実であったのです。