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チャンピオン、妖精になる?

作 ミューズ · 2026-03-11

闇の中で白い光が閃いた。

そして感じる、得体の知れない温かさ。まるで雲の上に横たわっているような気分?

ソルア: …うう…ここはどこだ…天国か……。

まぶたは千斤の重さだった。

かろうじて目を開けると、天井の蛍光灯の光がぼんやりと滲んで見えた。

消毒薬の匂い。ピーピーという機械音。

病院。

これだけは確かだった。

ソルア: …助かったのか。私が?

胸をなでおろそうと手を上げた。

しかし。

「……?」

手が軽すぎる。

いや、軽いという言葉では足りない。まるで重力が半分になったようだった。

元々私の腕は、はちきれんばかりの筋肉で、並の太ももに劣らない太さを誇っていた。

だが、今目の前で力なく揺れているあれは…ただの割り箸だ。

ソルア: 何だ…なぜ私の腕が…どこか飢餓体験でもしてきたイワシみたいになってるんだ…?

背筋が寒くなり、布団を蹴飛ばした。

腕がこの状態なら、下半身は見るまでもない。

「うっ」と息が詰まった。

私のたくましかった脚はどこへ行ったのか、骨と皮ばかりの二本が横たわっている。

患者服の裾を勢いよくまくり上げた。

異常なほど滑らかだ。青白いほど白い。おまけに毛が一本もない。

私の野性味あふれる脚の毛はどこへ蒸発したんだ?誰か寝ている間にワックス脱毛でもしたのか?

いや、それよりもこの痩せこけた骨格は何だ!

これは人間の脚ではなく、ショーウィンドウのマネキンの脚をくっつけただけじゃないか!

私はあまりの驚きに、叫び声を上げようと口を開いた。

ソルア: ……え?!

声が裏返った。

声が高い。高すぎる。

私の声は元々、地下3階の岩盤水に響き渡る洞窟の低音なのに。

今出た声は?

ソルア: …あ、あ、マイクテスト。うわあああ?!

これはほとんどヘリウムガスを吸ったウグイスの声だ。

アニメのヒロインの吹き替えトーンじゃないか!

一人でメンタルが崩壊して「ああ」と言っていると、ガラガラと。

カーテンがそっと開いた。

おばさん: ソルア… 目を覚ましたの?

中年女性。

縮れた髪をきちんと結んだ、いかにも長年子供の世話をしてきたようなおばさんが、涙を浮かべながら入ってきた。

その後ろには、体格のいい「メン・イン・ブラック」スタイルの男性が黙って立っていた。

どう見ても警護員だ。

おばさんが近づいてきて、私の痩せた手をがしっと掴んだ。

おばさん: ああ、うちの子… よかった… 神様が助けてくださったのね… 生き返ったわ……。

…子?

私36歳だけど? ひげの生えたおじさんに子?

でも、この人の表情と話し方、妙に見覚えがある。

昔、孤児院にいた頃、私を気遣ってくれた先生の感じだ。

ソルア: あの… どなた…?

おばさん: そうよ、うちのソルアよ。どれだけ驚いたかわかる? だからチェ室長と一緒に行きなさいって言ったじゃない。道で倒れて心臓が止まったって聞いた時… おばさんの心臓も止まるかと思ったわ。

心臓? 止まったって?

待てよ、パズルがはまり始めた。

その時、後ろにいた警護員が重々しく口を開いた。

チェ室長: お父様とお母様は今日、重要なミーティングがございますので… まず私たちが先に参りました。後ほどお立ち寄りになります。

私はぼんやりとその言葉を反芻した。

子供が死の淵から生還したのに、親はビジネスのために来なかった?

叔母と警護員だけをよこした?

幼い頃の記憶がオーバーラップした。

生まれてすぐに捨てられた子供。薄暗い保育園の天井。

そして今、この「ペク・ソラ」という子供も……。

「…この家もバラバラだな。親運がないのは私と同じか。」

何とも言えない切なさが胸の片隅から押し寄せてきた。

しかし、感傷に浸っている場合ではない。まずは状況整理が必要だ。

会話の内容からすると、ペク会長は父親で、奥様は母親だろう。

だとすれば、自然とこの子の名前は「ペク・ソラ」になる。白雪(ペクソル)か、名前と見た目がぴったりだな。

私の隣にいるこのおばさんは、自分を叔母だと言ったので「叔母」と呼称整理。

そして、後ろに屏風のように立っている警護員は、先ほど叔母が言ったことを基にすると「チェ室長」だろう。

よし、大体把握完了。

……いや、待てよ。

今、他人の家の家系図を調べている場合じゃないだろ。

じゃあ私は?キム・チョルスは?

私の197センチ、150キロの肉体はどこに行ったんだ?

私の洗濯板のような腹筋は?私のスクワット200キロの記録は?!

心臓がドキドキするどころか、狂ったようにタップダンスを踊り始めた。

不安+焦燥+大混乱パーティー。

私は本能的に自分の手の甲を再び見た。

血管が透けて見えるほど透明で白い手。指は長くて細く、軽く叩いただけでも折れそうだ。

これが私の手なら…私はどこに行ったんだよ!

頭の中でサイレンが鳴り響いた。

[緊急クエスト:本人の顔を確認せよ。]

口が脳より先に反応した。

ソラ: …あの…その…鏡、ありますか?

叔母は目を丸くした。

叔母: 鏡?急にどうしたの、ソルア?顔に怪我はないけど?

「叔母さん、怪我どころか、今私ホラー映画を撮ってるんですよ?」と言いたかったが、口からは出なかった。

ソルア: そ…ただ…見たかったんです…私の状態が……。

できるだけ可哀そうなふりをして演技した。

すると、チェ室長が戸棚を漁って手鏡を一つ取り出してくれた。

チェ室長: はい、どうぞ。

私は震える手で鏡を受け取った。

どうか。どうか夢であってくれ。夢なら目覚めて宝くじを買う。

ゆっくりと鏡を持ち上げた。

ソルア: ……。

鏡に映っていたのは、キム・チョルスではなかった。

髭の跡のある恐ろしいおじさんはどこにもいない。

雪のように白い肌。鹿のような瞳。触れば倒れそうなか細い顎のライン。そしてサクランボのような唇。

私が心肺蘇生をしていた、まさにその少女だった。

「……やばい。超美人じゃん?」

いや、感心している場合じゃない。

瞬間、全身に鳥肌が立った。

ソルア: ちょっと…これ…何…。

声も女。表情も女。体も女。

しかもこの子は…さっき息が止まっていたはずなのに?

私の魂は今、リングの上でバック転をしながら叫んでいた。

おい!!!私どこ行ったんだよ!!!私の体返せ!!!

本能的に荒い言葉が飛び出した。

ソルア: …ああ、クソッ?

しかし、そのこってりとした悪口さえ、あまりにも清らかで可愛らしいウグイスの声で出力された。

[システム:悪口の打撃感が-100減少しました。]

「あ…終わった……。」

私、キム・チョルス。

酸いも甘いも経験した元ヘビー級チャンピオン。

今日から[病弱美少女(Lv.1)]に転職してしまった。

チェ室長は首を傾げながら呟いた。

チェ室長: …声が…少し…荒くなったような気もするが…?

「はっ」私は慌てて口を塞いだ。

気づかないで、お願いだから。

この状況をどう説明すればいいんだ。「実は私、憑依したおじさんなんです」なんて言ったら、精神病院直行だ。

瞬間、頭の中が真っ白になった。

これ、どこかでよく見た設定だぞ。

ドラマや映画、あるいは最近の若者が夢中になっているというウェブ小説に出てくる、ありふれたクリシェ。

いわゆる「魂チェンジ」とか「憑依」とかいうやつだ。

「まさか。そんなことはモニターの中でしか起こらないことじゃないか。」

これは21世紀の韓国の現実だ。魔法が乱舞するファンタジーの世界じゃないんだ。

なのに、寝て起きたら性別が変わって、人が変わっていたって?

到底納得できないが、つねられた頬の痛みはひどく生々しかった。

そしてこの瞬間、現実否定よりも恐ろしい疑問が脳裏をよぎった。

「待てよ。もしそのありきたりなクリシェの通りに私がここに入ってきたのだとしたら…私の元の体はどこにあるんだ?」

まさか…私の体にこのひ弱な少女が入ったんじゃないだろうな?

想像してみた。

筋肉質の巨体の体で「キャー!何これ!」と太い声で悲鳴を上げるキム・チョルス(中身:ペク・ソルア)。

「……恐ろしい。」

心臓が再び動いている喜びよりも、自分の体を失った喪失感(筋肉の損失を含む)が津波のように押し寄せた。

神様。これってバランス調整がちょっと間違っていませんか?

とにかく、まずは私の体、本当のキム・チョルスの体がどこにあるのかを知る必要があった。

私はごくりと唾を飲み込み、勇気を出して尋ねた。

ソルア: あ…あの。その日…私を…助けてくれた…あの方は…どうなりましたか?

ああ、おかしくなりそうだ。本当にこんな玉が転がるような声が私の口から出ているの?

質問の内容よりも自分の声に先に鳥肌が立ったけれど、叔母の動きがぴたりと止まった。

彼女の目元にはすぐに涙が浮かんだ。

叔母: …ソルア。その方は…もう……。

ドスン。胸が締め付けられた。

叔母: 亡くなったの。その場で、すぐに。

叔母は震える声で、しかし明確に事実を突きつけた。

叔母: あなたの代わりに…あなたを助けようとしたその方が……。

その言葉が聞こえた瞬間、頭の中の回路が「プツン」と切れるような感覚だった。

……ちょっと待って。ちょっと待って、タイム。

私……死んだってこと?

雷が落ちた時、私はすでにゲームオーバーだったってこと?

だとしたら、今これは…

このふわふわした少女の体に入ったのが本当の「私」で。元のキム・チョルスは……

魂が抜け出した空っぽの抜け殻、廃棄処分対象ってこと?

胸が冷たく冷え切った。

ありえない。絶対に認められない。

私はその体で30年以上生きてきた。

誰にもハンサムだとか、可愛いとか言われるどころか、「もっと顔を和らげろ」とばかり言われていた無骨な体だったけれど。

それでも…それが「私」だったんだ。

毎朝腰が折れるほど痛んだその体。口を開けばガラガラと出てきた私の声。狭い靴の中でタコができすぎて石のように固まってしまった私の足。

そして…一生殴られ、殴り、耐えてきたこの拳まで。

恥ずかしいこともたくさんあったし、布団を蹴るような黒歴史もたくさんあったけれど。

その全てが合わさって「キム・チョルス」というキャラクターだったのに……。

それがこんな一瞬でサーバー終了させられたってこと?

突然息が詰まった。

このありえない状況で戻る方法もなく、この小さな体に閉じ込められて残りの人生を生きなければならないなんて。

一度も想像すらしたことのない恐ろしい未来が首を絞めてきた。

メンタルが崩壊寸前だったが、叔母が慎重に決定打を放った。

叔母: この病院の地下の葬儀場にいらっしゃるわ…格闘技選手だったそうよ。名前はキム・チョルスって言ってたわ。

私は反射的に顔を上げた。

キム・チョルス。

その三文字の名前が、脳裏に「ドン」と刻み込まれた。

そうだ。それが…死んでしまった「私」の名前だった。

正直に言って…未練などなかった。

そんな格好いい人生でもなかったから。

毎日喧嘩ばかりで、スポンサーもいない選手生活、残ったのは古い商店街の建物一つと、カビだらけの屋根裏部屋だけ。

幸せ?そんなもの、犬にでもくれてやれ。

少しばかり、ろくでもない人生だった。

だが、どんなにめちゃくちゃな人生でも、こんなにあっけなくエンディングクレジットを流していいものなのか。

別れの挨拶もなしに?

胸の片隅が、くしゃくしゃになった新聞紙のように潰れるような気分だった。

状況はシットコムなのに、笑いは微塵も出なかった。

私の葬式だ。

たとえこの体が少女のものであり、私が今どんな姿になっていようとも。

それでも行かなければならない。この目で確認しなければならない。

そして…たとえ私はここに閉じ込められているが、私の体だけでもきちんと見送ってやらなければ。

それは、今この途方もない状況で、私が最後にできる、たった一つのことだから。

私はか細い手をぎゅっと握った。

ソルア: …行かなければなりません。葬儀場に。

叔母は驚いて手を振った。

叔母: だめよ、ソルア!まだ回復もしてないのに…そんな所に行っちゃだめ!

ソルア: 私…どうしても行かなければなりません。

私の意思とは関係なく、あまりにも柔らかく、哀れな声が漏れ出た。

これは意図しない[必殺技:同情誘発]だった。

ソルア: …その方が…私を助けてくださったんですから。

私の言葉に、叔母の瞳が揺れた。

唇をきつく噛み締め、結局深いため息をついた。

叔母: …そう。分かったわ。あなたがそう思うなら…代わりに私が一緒に行くわ。

葬儀場に行くには、まずこの患者服を着替えなければならなかった。

叔母は「そのまま着て行ってもいい」と言ったが、それは違う。私の最後の姿を見せるのに、患者服はちょっと違う。

外出着はどこにあるかと尋ねると、キャビネットを指差した。

病室の一角にある、ソルア専用のキャビネット。

ホテル並みの病室に専属の叔母、ドアの外には警護員まで。どう見てもこの家は、格が違う。

確認のために体を起こした。

「あれ?」

最初は世界がぐるぐる回るのかと思ったが、体が軽すぎて慣れない。まるで紙人形になった気分?

少しよろめくと、叔母がぎょっとして駆け寄ってきた。

叔母: ソルア!危ないから起きないで。私がやってあげるから、あなたは横になっていて。

いえ、そうじゃなくて。

今、私はこの「ソルア」というキャラクターに関する情報がゼロなんです。

インベントリに何があるのか、装備の確認は自分でしなきゃいけないじゃないですか。

大丈夫だという手振りをして、キャビネットのドアを開けた。

そして。

カチッ。

0.5秒で再び閉めた。

……何あれ?

レース。フリル。リボン。またリボン。それに目がくらむようなオールホワイト。

この家の両親は、娘に天使のコスプレをさせる趣味でもあるのか?

私のメンタルがボロボロになりそうになったところで、叔母が尋ねた。

叔母: ソルア、お葬式なら…黒いワンピースを用意しようか?それとも、制服を着る?

ソラ: ワンピース……?

一瞬、思考が停止した。

葬式=黒い服。これは常識だが、あの「シャララ」としたワンピースを着ろと?この中に30代のおじさんが入っているのに?

絶対に無理だ。

いや、待てよ。俺は今、高校生じゃないか。チートがある。

俺は咳払いをして、できるだけ冷静を装って言った。

ソラ: …制服を着ればいいでしょう。

叔母は意外そうな顔で目を瞬かせた。

叔母: そう?大丈夫?まだ回復もしてないのに…制服は不便でしょう。

ソラ: はい。制服で…十分です。

そうは言ったものの、内心では冷や汗が流れた。

薄いブラウスに…スカート……?

はぁ。キム・チョルス人生2回目。最初から難易度「ヘル」だ。

叔母は妙に感激した表情で、苦笑いをした。

叔母: …そう。うちのソラも、少しは学校に行く気になったみたいね。よかった、本当に。

俺は口角を適当に上げて、曖昧に笑って見せた。

内心では別の考えでいっぱいだった。

「学校に行く気?それがどうしてよかったんだ?」

この反応を見るに、この体の持ち主である「ソラ」という子は、学校生活がどうも順調ではなかったようだ。

こんなに可愛らしい顔をしていていじめられていたのか?それとも性格破綻の不良で停学でも食らっていたのか?

まあ、前者だろうと後者だろうと、今の俺には関係ないことだ。

どうせ俺は学校に行く気など全くないのだから。

俺の目的地はただ一つ。俺の肉体が横たわっている、俺の葬儀場だけだ。

叔母は慣れた手つきでキャビネットから服を取り出し、ベッドの上に次々と広げ始めた。

真っ白なシルクのブラウス。高級感あふれるベージュのチェック柄スカート。ほつれ一つない薄手のニットベスト。それに、埃一つない輝くエナメルシューズまで。

ソルア: ……わあ。

思わずため息が漏れた。

一目見て見積もりができる。これはただの制服ではない。

[アイテム:財閥2世専用最高級制服フルセット]だ。

私が一生着ていた伸びたTシャツや汗臭い運動着とは次元の違う、気品あふれる服。

その時、ドアのところに立っていたチェ室長が咳払いをして、そっと外に出て行った。

チェ室長: では、楽に着替えてください。

カチャリ、ドアが閉まった。

そうだ、当然のことだ。花盛りの女子高生が着替えるのに、大人の男がいてはいけない。倫理的にも法的にも。

しかしだ。

問題は、私の魂も中年男性だということだ。

私も出たい。どうかこの状況から逃げたいと。

しかし、私の絶叫を聞くはずのない叔母は、明るい顔で、制服の横に「それら」を置いた。

手のひらほどの白い布切れが二枚。

見た瞬間、頭の中の回路が「プツン」と切れた。

ソルア: …あの、叔母さん。その…もしかして…あれ…絶対…着ないと…いけませんか?

叔母は目を丸くした。「これは一体どういう斬新な話なの?」という表情だった。

叔母: 当たり前でしょう!制服のブラウスがどれだけ薄いと思ってるの!着ないと大変なことになるわよ!

ドクン。

論理的に反論する言葉がない。

だからといって、「実は私が男なので着方がわからないんです」とは言えないだろう。

叔母が服を着せてあげようと腕を伸ばしてきたのを、私はぎょっとして振り払った。

ソルア: あ、私がやります!私、子供じゃないんですから!

俺の歳は36だ、36! (もちろん、この体は違うが。)

結局、服を奪い取るように掴んで、トイレに逃げ込んだ。

ドアを閉め、壁にもたれて息を整えた。

ここでルールを決めなければ、残りの人生、この行為をするたびに精神が崩壊するだろう。

俺は目を閉じ、リングに上がる時のように三つのことを心に刻んだ。

一つ。この体は俺のものではない。一時的に預かっているだけだ。

二つ。だから見ない。考えもしない。

三つ。必要なことだけをする。服は服だ。機能性衣類に過ぎない。

しっかりしろ、キム・チョルス。

目を閉じたまま、手だけを動かした。

下はまあまあ。上が問題だった。

背中でフックを留めるだと?腕が回らない。関節の角度が出ない。

「おい!なんで後ろで留めるように作ったんだ!誰が発明したんだ!腕を抜いて使えってことか?!」

汗をだらだら流しながら、結局、原住民式のサバイバル技術を発揮した。

前で留めてから、くるっと回して後ろに送る。

よし。

ブラウス、ベスト、スカート。ジッパーを上げてから、目を開けた。

鏡の中には、清純。可憐。か弱さ。

俺の知っていたキム・チョルスはどこにもなく、病弱な美少女が立っていた。

ソラ: 俺は……キム・チョルスだったんだ……ああ……くそ……。

そして見下ろしたスカートの丈が……。

太ももの真ん中。正確に真ん中だった。

ソラ: …うわあああ…。

スカートの裾を掴み、必死に下に引っ張った。下がらない。離すとまた上がる。元々の丈がこんなだ。

ソラ: 女たちは冬にこれ着てどうやって歩き回るんだ?凍え死なないのか?

あ…くそ……。本当にこの格好で葬儀場に行かなきゃいけないのか?俺の葬儀に、俺がこの格好で?

自分に何百回も問いかけたが、答えは一つだった。

そう。行かなければならない。

俺の葬儀じゃないか。恥ずかしいのは一瞬だが、後悔は一生続く。

精神がボロボロになったまま、トイレのドアを開けて出た。

ところが。

ガラガラ。

叔母が大きな車椅子を押し込んで入ってきた。

俺は本能的に後ずさりした。

ソルア: …え、これは何ですか?

叔母はあまりにも当然のように言った。

叔母: 病院で移動する時は絶対に乗らなきゃ。ソルア、あなたの心臓病は……。

ソルア: 心臓病?!

ほとんど悲鳴を上げた。

心臓病?誰が?俺が?

俺はキム・チョルスだ!一生体力一つを信じて生きてきた男だぞ!ハーフマラソンを走っても息一つ切らさなかった鋼鉄の体力なのに?!

俺は両手を狂ったように振り回した。

ソルア: あ、いや!俺…大丈夫です!本当に!両足は丈夫だから歩いて行けます!

叔母は目を三角にして言った。

叔母: ダメよ。

ソルア: …でも俺、本当に何ともないんですけど…。

叔母: ダ。メ。よ。

その口調があまりにも断固としていたので、一瞬たじろいだ。

隣にいたチェ室長まで口添えした。

チェ室長: 歩くと危ないよ、ソルア。

俺はほとんど泣きそうな顔で叫んだ。

ソルア: あれに乗ったら俺がもっと危なく見えます!みんなが注目しますよ?!

叔母: ソルア!あなたの心臓が……!

ソルア: 俺の心臓、今めちゃくちゃ元気に動いてます!ドンドコドコドコってリズムに乗ってますよ!

本当だ。まるでF1レーシングカーのエンジンを載せ替えたようだ。過去の俺の心拍数よりも安定しているのに?!

しかし叔母は胸を押さえて泣き出した。

叔母: ああ、うちの子が正気じゃないわ。心臓が止まって生き返ってから何時間も経ってないのに、歩いて行こうと意地を張るなんて!

ソルア: …え?心臓が…止まっていたんですか?

叔母: ええ!それが昨日のことよ!

ソラ: …はい?

ガチャン。精神が再び粉々になった。

じゃあ、昨日この子が倒れたこと、いや死んだのは心臓のせいだったんだ。

それも知らずに私は…あんなに無知に心肺蘇生をしていたんだ。

チェ室長も深刻な顔で付け加えた。

チェ室長: 血圧、脈拍、酸素飽和度、全て…少し前まで危険な数値だったと聞きました。

「この人、危険なんじゃなくて死んでたんだよ?心臓も動いてないし、脈拍もないし、決定的に体温も冷たかったんだ。」

だけど、とにかく今の「私」は元気だ。青春そのものだよ!

ソラ: …いいえ?今は…すごく元気ですよ?

チェ室長: そんなはずがない。

チェ室長はきっぱりと腕を組んだ。

チェ室長: 君くらいの年齢の子はみんなそうだよ。「大丈夫です」と言って走り回って、急にパタッと倒れるんだ。

叔母: そうよ!この前もそうだったじゃない!

ソラ: 私がですか?!

二人は同時に頷いた。息がぴったりだ。

「ああ…それは『ペク・ソラ』の実績だ。」

だけど、この人たちの目には私がまだ「歩く時限爆弾」に見えるんだろう。

話が通じない。通じるはずがない。

ソラ: 私、本当に大丈夫です!ちょっと歩いてみましょうか?私、意外と丈夫なんですよ。もしかしたらハルクかも……!

私は証明して見せるかのように、制服のスカートを掴んでむっくりと立ち上がった。

まさにその瞬間。

叔母が雷のような声で叫んだ。

叔母: 座りなさい!

ソラ: あ、はい。

即死級の反射神経。保育園時代から身についた生存本能が飛び出した。

叔母は腰に手を当てて、小言の爆撃を開始した。

叔母: 病弱な子がこんなに浮かれて、血圧が急に下がって心臓が止まったらどうするの!

ソラ: 私、そんなに弱くないです…本当です…骨太なんですよ…。

叔母: あなた、今回で倒れるのが三回目よ!

ソラ: ……え?三回もですか?

叔母: だから車椅子に乗りなさい!

ソラ: 今は…なんともないのに…。

叔母: あなたの体はなんともなくても!私たちの心はなんともないわけじゃないの!

チェ室長が念を押した。

チェ室長: 叔母様の言う通りです。

二人はすでに「ペク・ソラ=ガラス人形」モードに突入していた。

私は頭を抱え込んだ。

「はぁ……。」

これは勝てない戦いだ。

叔母: さあ、乗りなさい。今すぐ!

ソラ: くぅぅぅぅ……。

叔母: ソラ!

ソラ: …乗ります。乗ります。

結局、どうしても突破できない[叔母+警護員鉄壁守備]に敗北。

私はおとなしく車椅子に腰を下ろした。

ドサッ。座った瞬間、スカートがまたひらりと上がった。

私は慌ててスカートを引き下ろしながらつぶやいた。

ソラ: …本当に…本当にこれで葬儀場に行かなきゃいけないの…?

叔母は今になって満足そうに笑った。

叔母: そう、やっぱりうちのソラは車椅子に乗ってる姿が一番清純だわ。

ソルア: ……それは褒め言葉ではありません、おばさん。

チェ室長は悲壮な面持ちで車椅子の取っ手を握った。

チェ室長: 安全が最優先だ、ソルア。

「私の人生の安全はもう終わったわ、おじさん……。」

そして、そう。

【制服を着た病弱美少女+過保護な警護チーム】、この最高の組み合わせが完成し、私の葬儀場へと出陣した。

私が私を弔いに行く。

世の中にこんな喜劇があるだろうか。