芥川龍之介
ある朝、極楽の蓮池のふちを歩いていたお釈迦様は、 はるか下の地獄で藻掻く犍陀多の姿を見つける。 盗みを重ね、人を殺めた大泥棒。 だが生前にただ一度だけ、彼は小さな蜘蛛を踏み殺さずに助けていた。 その一つの善のために、極楽から一筋の蜘蛛の糸が垂らされる。 血の池から細い糸を伝ってのぼる犍陀多。 ふと見下ろせば、数限りない罪人が同じ糸をのぼってくる。 「この糸はおれのものだ。下りろ。下りろ」 その一言が、何を断ち切ってしまったのか。 慈悲と我執を、わずか数千字で射抜いた芥川の名短編。
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