ドグラ・マグラ (6/47)
von 夢野久作
「心配しなくていいよ。ちょっと標本の位置を並べ替えただけなんだから。総長にもそう言っておいてくれ。実は、これには理由があってね。聞いてほしいんだ……。実は、私自身のことなんだけど、こうして大学の先生になれたのも、正直なところ、考えてみると、私は一種の研究狂、あるいは誇大妄想狂だと思うんだ。精神病学者の研究材料になる資格は十分にあると、自分でも診断している。……でも、今さら自分で名乗りを上げて、自分の病室に入院するわけにもいかないからね。とりあえず、こんな参考材料と一緒に、自分の脳髄を生きた標本として陳列してみたくなっただけなんだ。……もちろん、内科や外科ではそんな必要はないかもしれないけれど、精神病科に限っては、主任教授の脳髄も研究材料の一つとして扱わなければならない……徹底的な研究をしなければならない……というのが私の学術研究に対する態度なんだから仕方がない。この標本室を作った斎藤先生も、きっと地下で両手を挙げて賛成していると思うよ……」
若林博士がそう言って大笑いすると、さすが老練の塚江事務官も煙に巻かれたまま引退したそうだ。
若林博士の説明は、極めて平坦にスラスラと述べられたが、それでも私の度胆を抜くには十分だった。今まで形容詞ばかりで聞いていた正木博士の頭脳の本当の素晴らしさが、こうした何でもない冗談の中から輝き出るのを感じた瞬間、私は思わずゾッとした。世間一般が大切にする常識や規則を遥かに超越しているだけでなく、冗談半分で自分自身をキチガイの標本ぐらいにしか考えていない気持ちを通じて、大学全体、いや、世界中の学者たちを馬鹿にしているその頭の透明さ……その皮肉の辛辣さ、偉大さが、私には明らかに理解できたので、私はただ呆然として口を開けたままになってしまった。
しかし若林博士は、私の驚きとは無関係に言葉を続けた。
「さて、あなたをこの部屋にお連れした目的は他でもありません。今も階下の七号室でお話しした通り、まず第一に、この部屋に並んでいる標本や参考品の中で、どれが最もあなたの注意を引くかを試させていただきたいのです。これは人間の潜在意識、つまり普通の方法では思い出せない深いところにある記憶を探り出す一つの方法です。潜在意識は常に本人に気付かれないままに活動しており、その人を根強く支配していることは、すでに数多く証明されています。あなたの潜在意識の中に封じ込められている過去の記憶も、この部屋のどこかに陳列されているあなたの過去の記念物へと導き、鮮やかに思い出させるに違いないと考えています。……正木先生はかつて、バルカン半島を旅行中に、特有の女祈祷師からこの方法を学び、実験に成功されたそうですが……もちろん、万が一にもあなたが最初の令嬢と何の関係もない赤の他人であれば、この実験は絶対に成功しないでしょう。なぜなら、あなたの過去の記憶を呼び起こすべき記念物が、この部屋の中に一つもないからです……ですから、何でも構いません。この部屋の中で目に留まるものについて順々に質問してみてください。あなた自身が精神病に関する研究をするような気持ちで……そうすれば、そのうちに何か一つの品物について、電光のように思い当たることがあるでしょう。それがあなたの過去の記憶を呼び起こす最初のヒントになりますので、その後は恐らく一気に、あなたの過去の記憶のすべてを思い出すことになるでしょう」
若林博士の言葉は、やはり極めて無造作に、スラスラと流れ出た。
まるで大人が子供に話すような、軽やかで親切な気持ちを込めて……しかし、それを聞いているうちに、私は今朝からまだ一度も経験していなかった新しい戦慄が、心の底から湧き起こってくるのを抑えきれなくなった。
先ほどから感じていた、何もかもが出鱈目ではないかという疑念は、若林博士の説明を聞いているうちに、底からひっくり返されてしまった。
若林博士はさすがに権威ある法医学者だった。私を真実に彼女の恋人と認めているとしても、決して無理にそう思わせようとしているわけではなかった。最も公明正大で、最も遠回しな科学的な方法で、私の心理を一分一厘の隙間もなく取り囲み、私自身の手で直接に、私自身を彼女の恋人として指させようとしている。その確信の深さ……その計画の冷静さ……周到さ……。
……それならば、先ほど見たり聞いたりしたさまざまな出来事は、やっぱり真実に私の身の上に関係したことだったのかもしれない。あの少女は、やはり私の正当な従妹であり、同時に許嫁だったのかもしれない……。
……もしそうであれば、私は否応なく彼女のために、私自身の過去の記念物をこの部屋の中から探し出さなければならない責任があることになる。そして私は、それによって過去の記憶を呼び起こし、彼女の狂乱を救うべく運命づけられつつ、今、ここに立っていることになる。
ああ、なんということだろう。「自分の過去」を「狂人病院の標本室」から探し出さなければならないなんて。絶世の美少女が、初対面であるはずなのに、私の許嫁であるという証拠を「精神病研究用の参考品」の中から見つけ出さなければならないとは……。なんて奇妙な立場に置かれているのだろう。恥ずかしく、恐ろしい、そして不可解な運命だ。
そんなことを考えながら、私は知らず知らずのうちに額に浮かんだ汗を、新しいハンカチで拭いながら、再び部屋の中を恐る恐る見回し始めた。思いもよらない過去の自分が、鼻先に隠れているのではないかという、気味の悪い想像が心の奥深くでおののき、私を縮み上がらせた。再度、オズオズと部屋の中を見渡した。
部屋の中央から南北に区切られた西側は、普通の板張りで、標本らしいものが並んだガラス戸棚が立ち塞がっている。一方、東側の半分の床は薄いホコリをかぶったリノリウム張りになっていて、その中央には幅四五尺、長さ二間ほどの大きな卓子が、二つの肘掛け付きの回転椅子に挟まれながら横たわっている。その卓子の表面に張られた緑色の羅紗は、やはり薄いホコリを被ったまま、南側の窓から差し込む光線を眩しく反射し、この部屋の厳粛さを一層高めているようだった。また、その緑色の反射の中央には、カンバス張りの厚紙に挟まれた数冊の書類の綴りと、青い四角いメリンスの風呂敷包みが、勿体ぶってきちんと並べられているが、その上にも灰色のホコリが一面に覆いかぶさっている。どうやら、長い間誰も手を触れずに放置されているものらしい。その前には、赤い達磨の灰落としが一つ、やはり灰色のホコリを被ったまま置かれているが、それが書類に背を向け、毛だらけの腕を頭の上に組んで大きな口を開けて、永遠の欠伸を続けている様子は、まるで故意にその位置に置かれたかのようで、妙に私の気を引いた。
その赤い達磨の真正面に立っている東側の壁は、塗りたての卵色で、中央には人間一人が楽に座れるほどの大きな暖炉が取り付けられ、黒塗りの四角い蓋がしてある。その真上には、直径二尺以上もある丸型の大時計が掛かっていて、秒針の音も何も聞こえないまま、今の時間、七時四十二分を示している。どうやら、電気仕掛けのものらしい。その右側には大きな油絵が金縁の額に入れられ、左側には黒い枠に囲まれた大きな引き伸ばし写真とカレンダーが掛かっている。そして、その肖像写真の左側には、隣の部屋に通じる扉が見える。すべてが清々しい朝の光の中で、眩しく、またはくっきりと照らし出され、大学教授の居室らしい厳粛な静寂を作り出している光景を眺めているうちに、私は自然と襟を正したくなった。
実際、私はこの時、ある崇高なインスピレーションに打たれたように感じた。最初から持っていたような投げやりな気持ちや、彼女の運命に対する好奇心はどこかへ消え失せ、すべてを天命に委ねるような神聖な気分に満たされていた。詰襟のカラを両手で直し、神秘的な運命に導かれる行者のような気持ちで、ゆっくりと前に進み出て、参考品を並べた戸棚の列へと歩み入った。
私はまず、明るい南側の窓に近く並んでいる戸棚に近づいて行った。窓に面したガラス戸の中には、さまざまな奇妙な書類や掛軸のようなものが、それぞれ簡単な説明が書かれた紙を貼り付けて並んでいた。若林博士の説明によると、これらはすべて「私の頭も、これくらいに治癒しましたから、どうぞ退院させてください」という意味で、入院患者から主任教授宛に提出されたものだという。
――歯茎の血で描いたお雛様の掛軸――(女子大学卒業生作)
――火星征伐の建白書――(小学教員提出)
――唐詩選五言絶句「竹里館」隷書――(無学文盲の農夫が発病後、曾祖父にあたる漢法医の潜在意識を隔世的に再現し、揮毫したもの)
――大英百科全書の数十頁を暗記筆記した西洋半紙数十枚――(高文試験に失格した大学生提出)
――「カチューシャ可愛や別れの辛らさ」という同一文句の繰り返しばかりで埋めた学生用ノート・ブックの数十冊――(大芸術家を自称する失職活動俳優の「創作」)
――紙で作った懐中日時計――(老理髪師製作)
――竹片で赤煉瓦に彫刻した聖母像――(天主教を信じる小学校長製作)
――鼻糞で固めた観音像、ガラス箱入り――(曹洞宗布教師作)
私は、あまりにも惨めで痛々しいものばかりが次々に出てくるので、その一列のすべてを見てしまう前に、思わず顔を背けて通り抜けようとした。しかし、その時、ふとその戸棚の一番奥の、ガラス戸が壊れた片隅に、他の陳列品から少し離れて妙なものが置いてあるのを見つけた。それは最初、ガラスが破れているおかげでやっと目に留まった程度の、目立たない品物だったが、よく見るほどに奇妙な陳列物だった。
それは五寸ほどの高さに積み重ねられた原稿用紙の綴りで、かなり多くの人が読んだものらしく、上の方の数枚は破れかけてボロボロになっていた。ガラスの破れ目から怪我をしないように、手を突っ込んで注意深く調べてみると、全部で五冊に分かれていて、その第一頁ごとに赤インクで番号が打たれていた。一番上の一冊の半分千切れた第一頁をめくってみると、和歌のようなものがノート式の赤インク片仮名で横書きされていた。
巻頭歌
胎児よ胎児よ何故躍る 母親の
心がわかっておそろしいのか
その次のページには、黒インクのゴシック体で『ドグラ・マグラ』と標題が書かれているが、作者の名前は無かった。
一番最初の行は、「ブウウ――ンンン……ンンンン……」という不思議な音のような文字で始まっている。しかし、最後の行もまた同じように「ブウウ――ンンン……ンンンン……」で終わっているのを見て、これは一続きの小説のようなものなのではないかと感じた。全体的に、どこか人を馬鹿にしたような、狂気じみた印象を与える長大な原稿だった。
「……これは何ですか、先生。この『ドグラ・マグラ』というのは……」
若林博士は、いつになく気軽な様子で、私の背後から頷いた。
「はい。それは、精神病者の心理状態の不可思議さを表現した、珍しい面白い作品の一つです。当科の主任である正木先生が亡くなった後、すぐにこの附属病室に収容されていた一人の若い大学生の患者が、一気に書き上げて私の手元に提出したものです。」
「若い大学生が……」
「そうです。」
「……やはり退院させてくれといったような意味で、自分の頭の確かさを証明するために書いたものですか?」
「いや、そこがまだはっきりしないので、実は判断に苦しんでいるのですが、要するにこの内容は、正木先生と、私をモデルにして書かれた一種の超常識的な科学物語と言えるでしょう。」
「……超常識的な科学物語……先生と正木博士をモデルにした……」
「その通りです。」
「論文ではないのですか……?」
「……そうです。その辺が、やはり何とも申し上げかねますが、精神病者の文章は理屈っぽいものが多いそうですが、この作品だけは特別です。つまり、全体が一貫した学術論文のようにも見えますし、今までに類を見ない形式と内容の探偵小説のような読後感もあります。そうかと思えば、単に正木先生と私の頭脳を嘲笑し、翻弄するために書かれた無意味な漫文とも考えられ、実に奇怪な文章です。その中に盛り込まれている事実的な内容も非常に変わっていて、科学趣味、猟奇趣味、色情表現、探偵趣味、ノンセンス味、神秘趣味などが、全篇の隅々まで重なり合っているという、極めて眩惑的な構想です。落ち着いて読んでみると、やはり精神異常者でなければ書けないと思われるような気味の悪い妖気が全篇に溢れています……もちろん、火星征伐の建白とは全く性質が異なり、精神科学上の研究価値が高いと認められたため、ここに保管しているのですが、恐らくこの部屋の中でも……否、世界中の精神病学界でも、一番珍奇な参考品ではないかと考えています。」
若林博士は、この原稿を私に読ませたくてたまらない様子で、次第に饒舌に説明し始めた。その熱心さが異様だったので、私は思わず目をパチパチさせた。
「へえ。そんなに若い精神病者が、そんなに複雑で難しい筋道をどうして考え出したのでしょう?」
「……それはこういう訳です。その若い学生は、尋常一年生から高等学校を卒業するまで、ずっと首席で一貫してきた秀才なのですが、非常に探偵小説が好きで、将来の探偵小説は心理学と精神分析、精神科学の方面にあると信じた結果、精神に異常をきたしたようです。自分自身である幻覚錯覚に囚われた驚くべき惨劇を演出しました。そして、この精神病科病室に収容されると間もなく、自分自身をモデルにした一つの戦慄的な物語を書いてみたくなったようです……しかも、その小説の構想は前に申し上げた通り非常に複雑で精密なものでありながら、大体の本筋は驚くほど簡単なものです。つまり、その青年が、正木先生と私のために、この病室に幽閉されて、想像も及ばない恐ろしい精神科学の実験を受けている苦しみを詳細に描写したものに過ぎないのです。」
「……へえ。先生にはそんな記憶があるのですか?」
若林博士の目の下には、先ほどの通りの皮肉な、寂しい微笑の皺が寄った。それが窓から来る逆光線を受けて、白く、ぴくぴくと輝いた。
「そんなことは絶対にありません。」
「それじゃ、全部が出鱈目なのですね。」
「ところが、書いてある事実を見ますと、とても出鱈目とは思えない記述ばかりが出てくるのです。」
「へえ。妙ですね。そんなことがあり得るでしょうか?」
「さあ……実はその点でも判断に迷っているのですが……読んでみればお分かりになるでしょうが……」
「いや、読まなくてもいいですが、内容は面白いですか?」
「さあ……その点も少し説明に苦しみますが、少なくとも専門家にとっては面白いという形容では追いつかないほど、深刻な興味を感じる内容らしいですね。専門家でなくとも、精神病や脳髄について多少の科学的な興味や神秘的な趣味を持っている人々にとっては、非常に魅力的な対象になるようです。実際、当大学の専門家の中でも、これを読んだ者は最小限、二、三回は読み直させられているようです。そして、やっと全体の構造がわかると同時に、自分の脳髄が発狂しそうになっていることに気が付いたと言っています。ひどい場合には、この原稿を読んでから精神病の研究が嫌になり、私の受け持っている法医学部に転じてきた者が一人、それからもう一人は、この原稿を読んでから自分の脳髄の作用に信用が置けなくなり、自殺すると言って鉄道自殺をした者が一人いるくらいです。」
「へえ。なんだかものすごい話ですね。正気の人間が精神病者に顔負けしたんですね。よっぽど狂気じみたことが書いてあるんですね。」
「……ところが、その内容の描写は非常に冷静で、論理的に整っていて、普通の論文や小説を超えているのです。さらに、精神的な異常を抱えた人特有の記憶力の素晴らしさには、私も今さらながら驚かされています。『大英百科全書の暗記筆記』などとは比べ物になりません。……それからもう一つ、その構想の不可思議さが、普通の人の推理や想像を超えていて、読み進めるうちに、いつの間にか異様な幻覚や錯覚、倒錯した観念に巻き込まれそうになるのです。そういう意味で、このようなタイトルが付けられたのだと思いますが……」
「……じゃあ、この『ドグラ・マグラ』というタイトルは、本人が付けたのですね?」
「はい、その通りです。実に奇妙なタイトルですが……」
「……どういう意味なんですか?この『ドグラ・マグラ』という言葉の本当の意味は……日本語なのですか、それとも……」
「……さあ……それについても私は迷わされました。要するに、この一文は、タイトルから内容に至るまで、徹底的に人を惑わせるように仕組まれているとしか考えられません。……というのも、この原稿を読み終えた私が、その内容の不思議さに魅了された結果、もしかしたらこのタイトルの中に、その不思議な謎を解く鍵が隠されているのではないかと思ったからです。この『ドグラ・マグラ』というのは、そういった意味の隠語ではないかと考えました。……ところが、この原稿を書いた本人の青年患者は、わずか一週間ほどの間に、精神病者特有の精力を発揮して、不眠不休で書き上げてしまいました。そのため、さすがに疲れたのか、昼も夜もなくぐっすり眠るようになり、このタイトルの意味を尋ねることがしばらくできなくなってしまいました。……とはいえ、こうした不思議な言葉は、辞書や何かには一つも見当たりませんし、語源ももちろんはっきりしませんので、私は一時行き詰まってしまいました。しかし、そのうちに偶然面白いことに気付きました。元々、この九州地方には『ゲレン』や『ハライソ』、『バンコ』『ドンタク』『テレンパレン』など、旧ヨーロッパ系の訛り言葉が方言として多く残っているようですから、もしかしたらその一種ではないかと考えました。そこで、そうした方言を専門に研究している熱心な方に調べてもらったところ、ようやくわかりました。……この『ドグラ・マグラ』という言葉は、維新前後まではキリシタンの使う幻魔術を指していた長崎地方の方言で、現在では単に手品やトリックという意味にしか使われていない、一種の廃語のような言葉だそうです。語源や系統はまだ判明していませんが、強いて訳すなら、今の幻魔術や『堂廻目眩』『戸惑面喰』という字を当てて、同じように『ドグラ・マグラ』と読ませてもよいという話です。いずれにしても、そのような意味をすべて含んだ言葉には違いありません。……つまり、この原稿の内容が、徹底的にグロテスクで、端的にエロチックで、探偵小説のような、同時にノンセンスな……一種の脳髄の地獄、あるいは心理的な迷宮遊びのようなトリックで満ちているために、こうした名前が付けられたのだと思います」
「……脳髄の地獄……ドグラ・マグラ……まだよくわかりませんが……つまりどういうことなのですか?」
「……それはこの原稿の中に記述されている事柄をお話しすれば、少しは想像がつくでしょう。……すなわち、この『ドグラ・マグラ』物語の中に記されている問題は、すべて常識で否定できない、わかりやすく、興味深い事柄でありながら、常識を超えた深遠な真理の現れを基にした事実ばかりです。たとえば、
……「精神病院はこの世の活地獄」という事実を痛烈に表現した阿呆陀羅経の文句……
……「世界の人間は一人残らず精神病者」という事実を立証する精神科学者の談話筆記……
……胎児を主人公とする万有進化の大悪夢に関する学術論文……
……「脳髄は一種の電話交換局に過ぎない」と喝破した精神病患者の演説記録……
……冗談半分に書かれた遺言書……
……唐時代の名工が描いた死美人の腐敗画像……
……その腐敗美人に生前恋い慕われた美青年が、無意識のうちに犯した残虐、不倫、見るに堪えない傷害、殺人事件の調査書類……」