注文の多い料理店 (1) (1) (2)
von 宮沢賢治
西洋料理店「山猫軒」という看板が掲げられていました。
「君、ちょうどいいところだ。ここはなかなか開いているみたいだ。入ってみようじゃないか。」
「おや、こんなところに不思議な店があるね。でも、何か食事ができるんだろう?」
「もちろん、できるさ。看板にそう書いてあるじゃないか。」
「じゃあ、入ろう。僕はもう何か食べたくて倒れそうなんだ。」
二人は玄関に立ちました。玄関は白い瀬戸の煉瓦で組まれていて、実に立派でした。硝子の開き戸があり、その上には金文字でこう書かれていました。
「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません。」
二人はその言葉を見て、嬉しそうに言いました。
「これはどうだ、やっぱり世の中はうまくできているね。今日は散々苦労したけれど、今度はこんないいことがあるなんて。この店は料理店だけれど、ただでご馳走してくれるんだ。」
「どうやらそうらしい。『決してご遠慮はありません』というのはその意味だ。」
二人は戸を押して中に入りました。そこはすぐに廊下になっていました。硝子戸の裏側には、金文字でこう書かれていました。
「特に肥った方や若い方は、大歓迎いたします。」
二人は「大歓迎」と聞いて、ますます喜びました。
「君、僕たちは大歓迎にあたっているんだ。」
「そうだね、僕たちは両方兼ねているから。」
廊下を進んでいくと、今度は水色のペンキが塗られた扉がありました。
「どうも変な家だ。どうしてこんなにたくさん扉があるんだろう。」
「これはロシア式だ。寒いところや山の中はみんなこうなんだ。」
そして二人はその扉を開けようとすると、上に黄色い字でこう書いてありました。