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4〜1

von 太宰治

僕の信頼は、予想以上に素晴らしい形で報われた。四時の静かな時間、廊下のスピーカーから突然、事務員の声が響いた。

「そのまま、そのままの位置で、リラックスしてお聞きください。」彼の声は続けた。「以前から問題になっていた助手の化粧について、今日限りこれを改めると、助手たちから自発的に申し出がありました。」

隣の「白鳥の間」からは、歓声が上がった。臨時放送はさらに続き、

「今晩の夕食後、それぞれ化粧を落とし、遅くとも今晩七時半の摩擦の時間には、アメリカの方々に誤解を与えない程度の簡素な装いで、塾生の皆さんにお目にかかるそうです。また、助手の牧田さんが一言、塾生の皆さんにお詫びを申し上げたいとのことです。どうか、牧田さんのこの純情を汲んであげてください。」

牧田さんとは、あの孔雀のことだ。彼は少しせきばらいをして、

「私こと、」と口を開いた。

隣の部屋からは、笑い声がどっと起こった。僕たちの部屋でも、みんなニヤニヤしながら聞いていた。

「私こと、」と、彼の声はこおろぎのように細く可憐だった。「時節も場所もわきまえず、最年長者であるにもかかわらず、ふつつかに残念なことをいたしました。深くお詫び申し上げます。今後とも、何卒よろしくお導きください。」

「よし、よし。」隣の部屋から声が聞こえた。

「可哀そうに。」かっぽれがしんみりと言いながら、僕の方を横目で見た。少し胸が痛んだ。

「最後に、」と事務員が引き取った。「これは助手たち一同からのお願いですが、牧田さんの従来の綽名を即刻改正してほしいとのことです。今日の臨時放送はこれだけです。」

「白鳥の間」から、すぐに回覧板が回ってきた。

「一同満足せり。ひばりの労を多とす。孔雀は、私こと、と改名すべし。」

かっぽれはその提案にすぐ反対した。「私こと」という綽名をつけるのは、あまりにも残酷だというのだ。

「むごいじゃねえか。あれでも一生懸命に言ったんだぜ。純情を汲み取ってくれって言われたじゃねえか。空飛ぶ鳥を見よ、というわけなんだ。一視同仁じゃねえか。人をのろわば穴二つというわけになるんだ。俺は絶対反対だ。孔雀が化粧を落として黒い地肌を見せるってわけだから、これはカラスとでも改めたらいいんだ。」

その意見は、かえって辛辣で残酷だった。何にもならない。

「孔雀が簡素になったんだから、孔雀の上の字を一つ省略して雀とでもするさ。」越後が言って、うふふと笑った。

雀も少し理にかなっていて面白くないが、まあ長老の意見だし、回覧板に「私こと」は酷に過ぎる、「雀」など穏当ではないと僕が書き込んで、かっぽれに持たせた。「白鳥の間」には、ほうぼうの部屋から綽名の提案が殺到していたが、結局「私こと」に落ち着くかもしれない。あの時の孔雀の小さなせきばらいを一つして、「私こと」と言い出したところは、なんとも愛おしく、忘れられないものだった。「私こと」以外の綽名は、色あせて感じられる。

七時の摩擦の時間、キントトとマア坊、カクラン、竹さんが、それぞれ金盥を抱えて「桜の間」にやって来た。竹さんは、澄ました顔でまっすぐに僕のところに来た。キントトとマア坊は、このたびのお化粧の注意人物として挙げられていたが、その夜、僕たちの部屋に来た時の様子を見ると、髪の形など少し変わったようにも見えるが、まだ何だかお化粧をしているようだった。

「マア坊は、まだ口紅をつけてるようじゃないか。」と僕は小声で竹さんに言った。竹さんはシャッシャッと摩擦を始めて、

「あれでも、ずいぶん拭いたり洗ったりして大騒ぎや。一度に改めろと言っても、それは無理。若いからね。」

「竹さんの働きは、大したものだね。」

「前に場長さんからも、幾度となく注意があったんや。今日の事務所からの放送を、場長さんもお聞きになって、いいご機嫌やった。今日の放送は誰の発案かね、とおっしゃるさかい、ひばりの発明や、と言ったら、愉快な子ですなあ、って、あの笑わない場長さんが、にやにやっと笑ってた。」竹さんも、今日の口紅事件では少し興奮しているのか、いつになくおしゃべりだった。

「僕の発明じゃないよ。」軍功の帰趨ははっきりさせておかなければならない。

「同じことや。ひばりが言わなかったら、うちだって動こうとは思わない。好き好んで憎まれ役を買う人なんていないだろう。」

「憎まれたのかね。」

「ううん。」彼女は特徴的な涼しい笑顔で首を振り、「憎まれはしないけど、うちはつらかった。」

「孔雀の挨拶は、ちょっと僕もつらかったよ。」

「うん。牧田さん、あの人自分から挨拶させてと申し込んできたのよ。悪気のない、いい人や。お化粧が下手らしいけど、私も少しは口紅をさしてるけど、わからないでしょう?」

「なあんだ、同罪か。」

「わからないくらいなら、いいのや。」と平気な顔で、シャッシャッと摩擦を続ける。

女だなあ、と思った。そうして僕は、この道場に来て初めて、竹さんを可愛らしいと思った。大鯛だって、馬鹿にはできない。

どうだい、君。僕は改めて君に、この道場の訪問を勧める。ここには、尊敬するに足る女性が一人いる。これは、僕のものでも君のものでもない。これは、日本が今、世界に誇れる唯一の宝だ。なんて言うと少し大袈裟な褒め方になってしまって、自分でも閉口するが、色気なしに親愛の情を抱かせる若い女性は少ないものだろう。君も、もう竹さんに対しては、色気なんて持っていないはずだ。親愛の気持ちだけだろうと思う。ここに、僕たち新しい男の勝利がある。男女の間の、信頼と親愛だけの交友は、僕たちにしかわからない。所謂あたらしい男だけが味わえる天与の美果である。この清潔の醍醐味が欲しかったら、若き詩人よ、ぜひともこの道場を訪れてほしい。

君は、すでに周囲の美しさに触れているかもしれないが、僕にとっては特別な日だった。

十月二十日。

昨日の訪問は本当に嬉しかった。君が持ってきてくれた花束は、僕にとっての宝物だ。竹さんとマア坊には、小さな赤い英語の辞典を一冊ずつお土産に。詩人らしい君の優しさが感じられて、特に竹さんとマア坊に気を使ってくれたことがありがたかった。

あの二人からは、シガレットケースや竹細工の藤娘をもらったけれど、少し戸惑ってしまった。お返しをしなければならないのではないかと、心のどこかで気にしていたところに、君が気を利かせてお土産を持ってきてくれたので、ほっとした。君には、僕よりも新しい一面があるように思える。僕は、女性から贈り物をもらったり、贈ったりすることに少し抵抗を感じてしまう。少し古い考えかもしれないね。君のように、さらりと贈答できるようになりたいと思った。君からまた一つ、大切なことを教わった気がした。君の爽やかな美徳を感じた瞬間だった。

マア坊が「お客様ですよ」と言って君を部屋に案内してきたとき、僕の胸はドキドキして、まるで内出血するかのようだった。君の顔を見る喜びも大きかったが、それ以上に、君とマア坊がまるで旧知の友のように笑い合って歩いてくる姿を見て、驚きを隠せなかった。まるでお伽噺のような光景だった。去年の春にも、似たような気持ちを味わったことを思い出す。

あの春、中学校を卒業した直後に肺炎を起こし、高熱で朦朧としていたとき、ふと枕元を見ると、主任の木村先生と母が笑いながら何か話し合っていた。学校と家庭という全く異なる世界にいる二人が、僕の枕元でまるで旧知の仲のように話しているのが不思議で、まるで十和田湖で富士山を見つけたような、混乱した幸福感で胸が躍った。

「すっかり元気そうになったじゃないか。」と君が言いながら花束を手渡してくれた。その瞬間、僕は少し戸惑ってしまった。君はマア坊に自然な態度で、「粗末な花瓶で結構ですから、ひばりに貸してやってください。」と頼んだ。マア坊は頷いて花瓶を取りに行き、僕は夢のような気持ちだった。何が何だかわからなくなり、「マア坊を前から知ってるの?」と下手な質問をしてしまった。

「君の手紙で知ってるじゃないか。」と君が笑った。

「そうか。」と二人で大笑いした。

「マア坊だってこと、すぐにわかった?」

「ひと目見てわかった。予想よりずっと感じがいい。」

「たとえば?」

「しつこいな。まだ気があるんだね。予想してたほど下品じゃない。ほんの子供じゃないか。」

「そうかしら。」

「でも、悪くない。骨の細い感じだね。」

「そうかしら。」

僕は、心地よい気持ちに包まれていた。