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二十八〜三十

von 夏目漱石

「君の家に財産があるなら、今のうちにきちんと整理しておくべきだと思うよ。余計なお世話かもしれないが、君のお父さんが元気なうちに、もらうべきものはしっかりともらっておいた方がいい。万が一のことがあった後で、財産の問題が一番厄介になるからね。」

「ええ。」

私は先生の言葉にあまり注意を払わなかった。私の家族の中で、そんな心配をしているのは私だけではなく、父も母も誰一人としていないと信じていたからだ。それに、先生の言うことが、あまりにも実際的であることに少し驚いた。しかし、年長者に対する敬意が私を黙らせた。

「君のお父さんが亡くなることを今から考えるような言い方をして気を悪くしたら、許してほしい。ただ、人間はいつか死ぬものだからね。どんなに元気な人でも、いつ死ぬかはわからないものだ。」

先生の口調は、いつもとは違って苦々しかった。

「そんなこと、全然気にしていません」と私は弁解した。

「君の兄弟は何人いるんだ?」と先生が尋ねた。

その後、先生は私の家族の人数や親戚の有無、叔父や叔母の様子について質問を続けた。そして最後にこう言った。

「みんな良い人たちなのか?」

「別に悪い人間はいないと思います。ほとんど田舎者ですから。」

「田舎者はなぜ悪くないのか?」

私はこの質問に困惑した。しかし、先生は私に考える余裕を与えずに続けた。

「田舎者は都会の人より、むしろ悪いこともある。君は今、親戚の中に特に悪い人間はいないと言ったね。でも、世の中には悪い人間というものがいると思っているのか?そんな型にはまった悪人は存在しない。普段はみんな善人だ。少なくとも、普通の人間だ。しかし、いざという時に急に悪人に変わるから恐ろしいのだ。だから、油断はできない。」

先生の話は、ここで終わる様子がなかった。私は何か言おうとしたが、後ろの方で犬が急に吠え始めた。先生も私も驚いて振り返った。

縁台の横に植えられた杉苗のそばには、熊笹が三坪ほど茂っていた。犬はその上に顔を出し、盛んに吠えていた。そこに十歳くらいの子供が駆け寄り、犬を叱りつけた。子供は徽章のついた黒い帽子をかぶり、先生の前に回って礼をした。

「叔父さん、入ってくる時、家に誰もいなかったかい?」と尋ねた。

「誰もいなかったよ。」

「姉さんやお母さんが勝手の方にいたのに。」

「そうか、いたのか。」

「ああ、叔父さん、今日は断って入ってくると良かったのに。」

先生は苦笑し、懐から五銭の白銅を取り出して子供の手に握らせた。

「お母さんにそう言っておいてくれ。少しここで休ませてくださいって。」

子供は賢そうな目を輝かせ、頷いた。

「今、斥候長になっているところなんだよ。」

子供はそう言って、躑躅の間を駆け下りて行った。犬も尻尾を高く巻いて子供の後を追った。しばらくすると、同じくらいの年の子供が二、三人、斥候長の後を追いかけて行った。

先生の話は、この犬と子供のために、結論に至ることができなかった。私が気にしていた財産の問題は、その時の私には全くなかった。私の性格や境遇から考えると、その時の私はそんな利害の念に悩む余地がなかったのだ。考えてみると、これは私がまだ世間に出ていないためでもあり、実際にその場に臨んでいないためでもあっただろうが、とにかく若い私には金の問題が遠くに感じられた。

先生の話の中でただ一つ、聞きたかったのは「人間はいざという時に誰でも悪人になる」という言葉の意味だった。単なる言葉としては、これだけでも私には理解できた。しかし、私はこの句についてもっと知りたかった。

犬と子供が去った後、広い若葉の園は再び静けさを取り戻した。私たちは沈黙に包まれたようにしばらく動かなかった。美しい空の色が次第に光を失っていくのが感じられた。目の前の樹は主に楓だったが、その枝に滴るように吹いた軽い緑の若葉が、段々と暗くなっていくように思えた。遠くから荷車が通る音がごろごろと聞こえた。私はそれを、村の男が植木か何かを載せて縁日へ出かけるものだと想像した。先生はその音を聞くと、急に瞑想から呼び戻されたように立ち上がった。

「もう、そろそろ帰りましょう。だいぶ日が長くなったようだが、こうして安閑としているうちに、いつの間にか暮れてしまうんだね。」

先生の背中には、さっき縁台の上に仰向けに寝た跡がたくさんついていた。私は両手でそれを払い落とした。

「ありがとう。脂がこびりついていませんか?」

「綺麗に落ちました。」

「この羽織はついこの間作ったばかりなんだ。だから、むやみに汚して帰ると妻に叱られるからね。ありがとう。」

二人はまた、だらだら坂の途中にある家の前に来た。入る時には誰もいない気配だった縁に、お上さんが、十五、六の娘を相手に、糸巻に糸を巻きつけていた。二人は大きな金魚鉢の横から「どうもお邪魔しました」と挨拶した。お上さんは「いいえ、お構い申しませんで」と礼を返した後、先ほど子供にやった白銅の礼を述べた。

門口を出て二、三町歩いた時、私はついに先生に向かって口を開いた。

「さっき先生が言った、人間は誰でもいざという時に悪人になるという意味ですね。あれはどういう意味ですか?」

「意味といっても、深い意味はない。――つまり事実なんだよ。理屈じゃないんだ。」

「事実で構いませんが、私が知りたいのは、いざという時というのはどんな場合を指すのですか?」

先生は笑い出した。まるで、今さら熱心に説明する気がないかのように。

「金を見ると、どんな君子でもすぐに悪人になるのさ。」

私には先生の返事があまりにも平凡で、つまらなく感じられた。先生が調子に乗らないように、私も拍子抜けしてしまった。そこで、私は気を取り直して歩き出した。すると、先生は少し後れを取ってしまった。「おいおい」と声をかけてきた。

「ほら、見てごらん」

「何をですか?」

「君の気分だって、私の返事一つで簡単に変わるじゃないか」

待ち合わせるために振り向いて立ち止まった私の顔を見て、先生はそう言った。その時、私は心の中で先生を憎らしく思った。肩を並べて歩き出してからも、自分が聞きたいことをわざと聞かずにいた。しかし、先生は私の態度に気づいているのかいないのか、まるで気にしない様子で、いつも通り静かに落ち着いた歩調で進んでいった。私は少し腹が立ち、何とかして先生をやり込めてみたくなった。

「先生」

「何ですか?」

「さっき、先生は少し興奮されていましたね。あの植木屋の庭で休んでいる時に。私は先生が興奮しているのを滅多に見たことがないので、今日は珍しいところを拝見した気がします」

先生はすぐには返事をしなかった。私はそれが手応えのある反応だと思ったり、逆に的外れだったのかとも感じたりした。仕方がないので、もう何も言わないことにした。すると、先生が突然道の端に寄って行き、きれいに刈り込まれた生垣の下で裾をまくって小便をした。私はその間、ぼんやりと立っていた。

「やあ、失敬」

先生はそう言ってまた歩き出した。私はとうとう先生をやり込めることを断念した。私たちの通る道は次第に賑やかになっていった。今までちらほらと見えていた広い畑の斜面や平地が、まるで目に入らないかのように左右の家並みが揃ってきた。それでも、所々の宅地の隅には、豌豆のつるを竹に絡ませたり、金網で鶏を囲って飼ったりする様子が静かに眺められた。市中から帰る駄馬が次々と擦れ違っていく。そんなものに気を取られているうちに、私はさっきまで胸の中にあった問題をどこかへ振り落としてしまった。先生が突然そこへ戻ってきた時、私は本当にそれを忘れていた。

「私は先ほど、そんなに興奮しているように見えましたか?」

「そんなにというほどでもありませんが、少し……」

「いや、見えても構わない。実際、興奮するんだから。私は財産のことを話すと、きっと興奮するんです。君にはどう見えるか知らないが、私はこれで非常に執念深い男なんだから。人から受けた屈辱や損害は、十年たっても二十年たっても忘れやしないんだから」

先生の言葉は、元々の興奮よりもさらに高まっていた。しかし、私が驚いたのは、その調子ではなかった。むしろ、先生の言葉が私の耳に訴える意味そのものであった。先生の口からこんな自白を聞くのは、私にとって全くの意外だった。私は先生の性質として、こんな執着力を想像したことがなかった。私は先生をもっと弱い人だと信じていた。その弱さに、私の懐かしみの根を置いていたのだ。一時の気分で先生にちょっと挑戦してみようとした私は、この言葉の前に小さくなった。

「私は他に欺かれたのです。しかも血のつながった親戚から欺かれたのです。私は決してそれを忘れないのです。私の父の前では善人だった彼らは、父が亡くなるや否や許しがたい不徳義漢に変わったのです。私は彼らから受けた屈辱と損害を、小さい頃から今日まで背負わされている。恐らく死ぬまで背負わされ続けるでしょう。私は死ぬまでそれを忘れることができない。しかし、私はまだ復讐をしていない。考えてみると、私は個人に対する復讐以上のことを実際にやっている。私は彼らを憎むだけでなく、彼らが代表している人間全体を、一般に憎むことを覚えたのだ。私はそれで十分だと思う」

私は慰めの言葉さえ口に出せなかった。