十五〜十七
von 芥川龍之介
私は屏風の真ん中に、檳榔毛の車が空から落ちてくる様子を描こうと思っていました。良秀はそう言いながら、初めて大殿様の顔をじっと見つめました。彼は絵のことになると、まるで狂ったようになると聞いていましたが、その時の目の輝きには確かに恐ろしさがありました。
「その車の中には、一人の美しい女性が、猛火の中で黒髪を乱しながら苦しんでいるのです。顔は煙に包まれ、眉をひそめて空を見上げています。手は下簾を引きちぎり、降りかかる火の粉の雨を防ごうとしているかもしれません。そして、その周りには怪しげな鷙鳥が十羽、二十羽と、嘴を鳴らして飛び回っています。――ああ、その牛車の中の女性が、どうしても私には描けません。」
「それで――どうするつもりだ?」
大殿様はなぜか妙に嬉しそうな表情で、良秀を促しました。しかし、良秀は赤い唇を熱に浮かされたように震わせながら、まるで夢を見ているかのように言いました。
「それが私には描けません。」と、もう一度繰り返しましたが、突然、何かに噛みつくような勢いで、
「どうか檳榔毛の車を一輛、私の目の前で燃やしていただきたいのです。もし可能であれば――」
大殿様は顔を曇らせたと思うと、突然大声で笑い出しました。その笑い声に息を詰まらせながら、こう言いました。
「おお、すべてその方の言う通りにしよう。できるかできないかの議論は無意味だ。」
その言葉を聞いた私は、何か不吉な予感がしました。実際、大殿様の表情も、口の端には白い泡がたまっており、眉のあたりにはびくびくと電気が走っているようで、まるで良秀の狂気に染まってしまったかのように、ただ事ではありませんでした。彼が言葉を切ると、すぐに何かが爆ぜたような勢いで、止めどなく喉を鳴らして笑い続けました。
「檳榔毛の車にも火をつけよう。そしてその中に美しい女性を一人、装飾を施して乗せよう。炎と黒煙に襲われ、車の中の女性が悶え死にする――それを描こうと思いついたのは、さすが天下第一の絵師だ。褒めてやるぞ。」
大殿様の言葉を聞いた良秀は、急に顔色を失い、喘ぐようにただ唇を動かしていましたが、やがて体中の力が抜けたように、畳に両手をついて、
「ありがとうございます。」と、聞こえるか聞こえないかの低い声で、丁寧に感謝の意を表しました。これはおそらく、自分の考えていた恐ろしい目論見が、大殿様の言葉に伴って次々と目の前に浮かんできたからでしょう。この時だけは、良秀が気の毒な人間に思えました。
それから二、三日後の夜のことです。大殿様は約束通り、良秀を呼び寄せ、檳榔毛の車が燃える様子を目の前で見せてくれました。もちろん、これは堀河の御邸ではなく、俗に「雪解の御所」と呼ばれる、昔大殿様の妹君が住んでいた洛外の山荘で行われました。
この雪解の御所は、長い間誰も住んでいなかった場所で、広い庭も荒れ放題でした。しかし、この人気のない様子を見た者の推測によれば、ここで亡くなった妹君の噂が立ち、月のない夜には、今でも怪しい赤い袴が廊下を歩くという噂もありました。――それも無理はありません。昼間でも寂しいこの御所は、一度日が暮れると、遣り水の音が一際陰に響き、星明りに飛ぶ五位鷺も、まるで怪物のように見えました。
その夜はやはり月のない、真っ暗な晩でしたが、大殿様の油の灯影で見ると、縁に近く座を占めた大殿様は、浅黄の直衣に濃い紫の浮紋の指貫を身にまとい、白地の錦の縁を施した円座に高々とあぐらを組んでいました。その前後左右には、側近たちが五、六人、恭しく並んでいましたが、その中に一人、特に目立つ侍がいました。彼は先年陸奥の戦で飢え、ついには人肉を食べるようになったという強力な侍で、下に腹巻を着こんだ姿で、太刀を鴎尻に佩き、厳しく縁の下にひざまずいていました。――その光景は、夜風に揺れる灯の光で、明るくも暗くも見え、まるで夢の中のように不気味でした。
その上、御庭に据えられた檳榔毛の車が、高い車蓋で暗を抑え、牛はつけず黒い轅を斜めに立てかけて、金物の黄金が星のようにちらちらと光っていました。それを眺めると、春とは言えども何となく肌寒く感じました。車の内側は、浮線綾の縁を施した青い簾で重く封じ込められているため、何が入っているのかはわかりません。そして、その周りには仕丁たちが手に燃え盛る松明を持ち、煙が御縁の方へ流れるのを気にしながら、控えていました。
良秀は少し離れたところで、ちょうど御縁の真向に跪いていました。いつもの香染めらしい狩衣に、しおれた烏帽子をかぶり、星空の重みに圧されているかのように、いつもよりさらに小さく、みすぼらしく見えました。その後ろには、同じような烏帽子と狩衣を着た弟子の一人がいるようでしたが、二人とも遠い薄暗がりの中にひざまずいているため、私のいる御縁の下からは、狩衣の色さえもはっきりとはわかりませんでした。
時刻は真夜中に近づいていました。林の中は静まり返り、暗闇が一同の息を飲み込んでいるようでした。かすかな夜風が吹き抜ける音が聞こえ、松明の煙がそのたびに煤臭い匂いを運んできました。
大殿様はしばらく黙って、この不思議な光景をじっと眺めていましたが、やがて膝を進めて、
「良秀、」と鋭く呼びかけました。
良秀は何か返事をしたようでしたが、私の耳にはただ唸るような声しか届きませんでした。
「良秀。今宵はその方の望み通り、車に火をかけて見せてやろう。」
大殿様はそう言って、側にいる者たちの方をちらりと見ました。その瞬間、大殿様と側近の間に意味ありげな微笑が交わされたように思えましたが、これは私の気のせいかもしれません。すると良秀は恐る恐る頭を上げて縁の上を仰いだようですが、やはり何も言わずに控えていました。
「よく見ておけ。それは私が日頃乗る車だ。その方も覚えているだろう。――私はその車にこれから火をかけて、目の前に炎熱地獄を現そうと思っている。」
大殿様は再び言葉を止め、側近たちに目をやりました。そして急に苦々しい口調で、「その中には罪人の女房が一人、縛ったまま乗せてある。だから車に火をかければ、必ずその女は肉を焼かれ、骨を焦がして、四苦八苦の最期を遂げるだろう。その方が屏風を仕上げるには、またとない良い手本だ。雪のような肌が燃え上がるのを見逃すな。黒髪が火の粉になって舞い上がる様子も、よく見ておけ。」
大殿様は三度口を噤みましたが、何を思ったのか、今度はただ肩を揺らし、声を立てずに笑っていました。
「末代までもない観物だ。私もここで見物しよう。それ、簾を上げて、良秀に中の女を見せてやれ。」
その言葉を聞くと、仕丁の一人は片手に松明の火を高くかざしながら、急いで車に近づき、片手を差し伸べて簾をさらりと上げました。けたたましい音を立てて燃える松明の光が、一瞬赤く揺らぎながら狭い空間を鮮やかに照らし出しました。そこには惨たらしく、鎖にかけられた女房が――ああ、誰か見違えてしまうでしょう。きらびやかな刺繍のある桜の唐衣に、艶やかな黒髪が垂れ、うちかたむいた黄金の釵子も美しく輝いていました。しかし、身なりは違えど、小柄な体つき、白い首元、そしてあの寂しげな横顔は、良秀の娘に違いありません。私は思わず叫び声を上げそうになりました。
その時、私の向かいにいた侍が慌てて身を起こし、柄頭を片手で抑えながら、ぎょっと良秀の方を睨みました。それに驚いて眺めると、あの男はこの光景に半ば正気を失っているようでした。今まで下に蹲っていたのが、急に飛び立ち、両手を前に伸ばしたまま、車の方へ思わず走りかけようとしました。ただ、残念ながら前にも言った通り、遠い影の中にいるため、顔ははっきりとはわかりません。しかし、そう思ったのはほんの一瞬で、色を失った良秀の顔は、まるで何か目に見えない力に宙に吊り上げられたように、暗がりを切り抜けて目の前に浮かび上がりました。娘を乗せた檳榔毛の車が、この時、「火をかけい」と言う大殿様の言葉と共に、仕丁たちが投げる松明の火を浴びて炎々と燃え上がったのです。